ジ・オーブとデヴィッド・ギルモアによる2010年のコラボレーション・アルバム『メタリック・スフィアーズ』を再構築したアルバム『メタリック・スフィアーズ・イン・カラー』
アンビエント・ハウスのパイオニアとして知られるジ・オーブとロックの巨星ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアが邂逅、衝撃の音響空間が話題となった2010年のコラボレーション・アルバム『メタリック・スフィアーズ』を再構築したアルバム『メタリック・スフィアーズ・イン・カラー』。
『メタリック・スフィアーズ』を新たに作り直すことになった経緯をプロデューサーのユースは次のように語る。
「『メタリック・スフィアーズ・イン・カラー』の構想は、アレックス・パターソン(≒ジ・オーブ)が当初のヴァージョンでもっとできることがあったはずなのに、あの時は『ブレードランナー』のサントラmeetsピンク・フロイドの『あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)』のような音楽を作るという方向性だったために、アレックスにそうする機会がなかったことから生まれたんだ。それで、僕の方から"リミックスしてジ・オーブの名盤みたいにしないか?"と提案したんだ。それで改めて作業してみたところ、完全な別物と言っていいアルバムに仕上げることができたんだ」。
『メタリック・スフィアーズ』のオリジナル盤は2010年にリリースされたが、それはほとんど偶然の産物だった。2009年の晩春、デヴィッド・ギルモアは、グラハム・ナッシュの曲「シカゴ/チェンジ・ザ・ワールド」をレコーディングするためにスタジオに入っていた。元はクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングが、アメリカへの身柄引き渡しに直面していたイギリス人ハッカー、ゲイリー・マッキノンを支援するために作った曲である。クリッシー・ハインド、ボブ・ゲルドフ、ゲイリー自身のヴォーカルがフィーチャーされ、キャンペーンはピーター・ガブリエル、スティング、女優のジュリー・クリスティにも支援された。
そこで、アンビエント界のパイオニア陣ジ・オーブとプロデューサーのユースもこのキャンペーンに支援の手を差し伸べ、トラックをリミックスするとともに、ロンドンのワンズワースにあるユースのスタジオ「ザ・ドリーミング・ケイヴ」でさらなるギター・パートを提供してくれないかとデヴィッド・ギルモアに頼んだことがきっかけとなり、両者のコラボ・プロジェクトが始まった。ユースとアレックス・パターソンは、そのセッションを2つのアンビエントな組曲へと発展させている。それが『メタリック・スフィアーズ』に収録された28分半の「メタリック」と20分の「スフィアーズ」である。"3D60オーディオ"という当時の最新サラウンド・サウンド技術を用いた初のメジャー・レーベル作品のひとつとなったこのアルバムは、今尚ヘッドフォン愛好家たちの間で人気を博している。
今回再構築された『メタリック・スフィアーズ・イン・カラー』では、曲名も新たに「シームレス・ソーラー・スフィアーズ・オブ・アフェクション・ミックス」と「シームレス・マーシャン・スフィアーズ・オブ・リフレクション・ミックス」とし、CDとアナログLPで発売される。
発売・販売元 提供資料(2023/08/17)
本作はジ・オーブとピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアが2010年に放ったコラボ作『Metallic Spheres』を再構築したアルバム。元の作品以上にアンビエント色が濃くなったサウンドは極上のトリップを聴き手にもたらし、繰り返し聴きたくなる中毒性たっぷりの多層的な音像を築き上げている。純然たる新作と言っても差し支えない内容だ。
bounce (C)近藤真弥
タワーレコード(vol.478(2023年9月25日発行号)掲載)