これぞ21世紀のタンゴ! 現代タンゴの革命児ディエゴ・スキッシ率いる五重奏の待望新譜は、アストル・ピアソラ曲集。
2019年、アストル・ピアソラの孫であり自身もタンゴジャズのドラマーとして活躍するピピ・ピアソラが、自身でキュレーションするピアソラ・フェスティバルにスキッシを招待。そこで祖父の作品をアレンジするように依頼したのが事の発端だ。フェスティバルでのパフォーマンスも好評だったのだろう。そのアレンジをもとに本作はレコーディングされた。
まずは先行公開された「Michelangelo 70」を聴いてほしい。ピアノ、バンドネオン、コントラバス、ギター、ヴァイオリン。すべてのパートをパーカッシヴにとらえた鉄壁のアンサンブルは、さらに成熟の域へと到達。時に現代音楽や電子音楽的なテクスチャーすらのぞかせつつも、オリジナルのアイデンティティは残し、強烈なドラマ性を伴いながら一気に駆け抜ける圧巻のトラックだ。
そもそもピアソラの楽曲をアレンジするのは非常に難しいとされている。誰しもが彼の楽曲に対し鮮烈な印象を抱くため、そのスタイルや魅力から逃れることは困難だからだ。ピアソラは楽譜上でピアソラなのである。さらにスキッシの場合、ピアソラと同じ五重奏編成である。スキッシにとっても、決して楽なプロジェクトではなかったであろう。そういった苦難は「Libertango」などの有名曲だけでなく、あまり知られていない楽曲をバランスよく配したあたりにも見て取れる。そしてキンテートのメンバーだけでなく、録音エンジニアのフロレンシオ・フストの手腕にも触れないわけにはいかない。フアン・パブロ・ナバーロのコントラバスを中心とした低音の現代的な響きこそが、ピアソラ、そしてタンゴを更新し21世紀のものとするキーポイントなのかもしれない。
発売・販売元 提供資料(2023/06/22)
アストル・ピアソラ以来のタンゴの革命家とも言われる鬼才ディエゴ・スキッシが自身に最も影響を与えたピアソラの楽曲をアレンジ。ピアノ、バンドネオン、コントラバス、ギター、ヴァイオリンというピアソラが決定づけた五重奏という編成で、ジャズや現代音楽の要素を取り入れた自身の独自性を最大限に発揮したアレンジは素晴らしいの一言。M1《Michalangelo 70》でのドラマチックに展開しつつ一気に駆け抜けていく緊張感のあるアンサンブルは、ドラムレスでありながらもダイナミックなリズムの変化を見事に表現している。
intoxicate (C)栗原隆行
タワーレコード(vol.165(2023年8月20日発行号)掲載)
タンゴを多角的にとらえ、特に近作ではミニマリズム的にシェイプアップさせることでそのドラマチック性、奥に秘めた普遍的感情をむき出しにしてきた鬼才ディエゴ・スキッシが、自身に最も影響を与えたタンゴの革命者ピアソラの楽曲集を出すというこのヤバさを理解してもらうにはどうすべきか…。現時点で《Michelangelo70》しか聴けてないがそれでも大傑作になるとことは明言できる。そもそも強調されたアクセントと複雑なリズムの絡み合いが特徴のこの曲をここまで極端にパーカッシヴに仕上げるなんてスキッシ以外不可能。ピアノ、バンドネオン、コントラバス、ギター、ヴァイオリンによるスリリングなリズムの応酬。
intoxicate (C)小畑雄巨
タワーレコード(vol.163(2023年4月20日発行号)掲載)