コールドプレイの作品には欠かせないコラボレーターであり、近年はイーノやボノボ、オービタルらとの絡みも見せている電子音楽家、ジョン・ホプキンス。今回2枚組の10周年記念盤が登場となったこちらの作品は、それまでの裏方的なイメージから突如フロアを意識したドープなテクノ~エレクトロニカに開眼し、グリッチを纏ったダンス・トラックを全開にしてキャリアの転換点となった2013年の名作。全編に本人による最新リマスターが施され、Disc-2ではモデラットやパンゲアらのリミックス、ピュリティ・リングやルル・ジェイムズ参加ヴァージョンなどのシングル曲が網羅されている。必携!
bounce (C)轟ひろみ
vol.478(2023年9月25日発行号)掲載(2023/09/25)
代表作『Immunity』が全曲リマスター音源&ボーナストラック9曲追加収録の豪華10周年記念盤として再発!!
エレクトロニック・ミュージックの無限の可能性を追求し、ダンスミュージックからインディーロックまで、幅広い音楽ファンを魅了するジョン・ホプキンスが、2013年に発表した代表作『Immunity』の10周年を記念し、全曲リマスター音源&9曲のボーナストラック追加収録の10周年記念盤を〈Domino〉よりリリース!1位のXLR8R、2位のCrack Magazineを筆頭に、数多くの音楽メディアの年間チャートで上位にランクインした大傑作アルバム『Immunity』。それまでの彼のキャリアの集大成であると同時に、2021年の『Music For Psychedelic Therapy』など、その後の進化にもつながるターニング・ポイントと言っても過言ではない。
卓越したプロデューサー、アイヴァー・ノヴェロ賞にノミネートされた映画音楽作家、またブライアン・イーノやコールドプレイのコラボレーターとして知られていた彼が、当時のキャリアにおいて最もアグレッシヴにダンスミュージックにフォーカスした『Immunity』を発表し、ソロ・アーティストとしてのイメージと評価を決定づけた。本作は決してテクノ・ファンに向けただけのものではなく、リスナーが様々な心の状態に達することを意識して制作したと本人は語っている。優美で哀愁のあるピアノの音から、心を揺さぶるドローンのハーモニーまで、常に新しいメロディーに対するアプローチを模索し、至高のエレクトロニカ・サウンドを完成させると同時に、グリッチ・ノイズも取り入れた独特なベース・サウンドとビートによって、テン年代に生まれたエレクトロニック・アルバムの最高傑作の一つという評価を獲得した。
国内流通仕様盤CDには解説書が封入される。
『Immunity』は、2010年後半から2012年前半の間に書いた作品だ。すべての要素に気を配り、自分のすべてを注ぎ込んだよ。この作品が僕の人生を変えた。それまでは500人規模の会場でプレイしていたが、1年足らずで5000人規模の会場でプレイするようになった。すべてのことが旋風のように起こり、それ以来、どんな創造的アプローチにも自由に身を任せられるようになった。この作品を作り、リリースすることは、とても特別な経験だった。
これまで自分が作ったものをリマスターしたことはなかったが、『Immunity』を大音量でマスタリングしたらどんなものになるか考えることはよくあった。オリジナルを手がけたガイ・デイヴィーがマスタリング前の音源を引っ張り出し、より繊細なアプローチをしてみようとトライしたんだ。でもすぐに、このアルバムの重要な特徴で、特にヘビーな曲で発揮される「圧力」の感覚が失われたように感じた。そこから、すでに人々が慣れ親しみ、重要視してきたものに変化を加えることに対して急に警戒心を抱くようになった。そこで、元のセッティングに戻しつつ、最後に微妙なエキスパンダーを加えて、少し開放的なサウンドにしてみた。その結果、従来の硬質感や激しさはそのままに、絶妙な余白が生まれたように感じた。このプロジェクトによって初めて周波数96khzに対応したガイのEMIデスクで音をかける機会も得られたよ。
- Jon Hopkins
発売・販売元 提供資料(2023/06/05)
裏方として控えめに活動してきた男であるが、今回の新作で見せる荒々しさはどうだ。野蛮なグリッチ・ノイズとサージョンばりのビートが執拗に鳴り響き、フロアに歓喜をもたらす。ドープで終末的な音のなかに秘められたこの快楽を、私たちはどう受け止めればいいのか。と思った矢先、打って変わって終盤のチルアウト的な繊細さに安堵させられ……。飴と鞭? 〈TAICOCLUB〉の出演も決まり、大きな話題を呼びそうな一枚。
bounce (C)水上渉
タワーレコード(vol.365(2014年3月25日発行号)掲載)