Ms.Machine結成4年目の2019年より開始したソロ活動の1フェイズを締め括る、初の単独フル・アルバム。吐く息の白さを幻視するコールドなテクスチャ、裂けたアルミニウムのように鋭利かつフラジャイルなヴォイス、相反するように怒りと結びついた橙黄色に滾る体温といったMs.Machineと地続きの感覚を保ちながらも、ラップのフロウ / ライミングにインスパイアされた歌唱、ひとりならではの内観によって得た新しい形態での7曲を収録。
スクリュー・オーソリティとしてのみならずプロデューサーとしても注目を浴びるAIWABEATZ、ドリルをハードコア・パンク経由の感覚でビルドアップするIRONSTONE、アンビエント / 00s IDMマナーのクリッキーなサウンドを聴かせる独デュッセルドルフ拠点のLucra400(katalog)、2ndフル・アルバム『TAILLAMP』(2022, WDsounds)が話題となった東金BYPASSの一員でもあるsostone、アナログ / モジュラー・シンセサイザー使いの演奏でボーダーレスに活躍し、エンジニアとしても信頼を寄せられるSTD0MKN、ラッパー / トラックメイカー・Ill Japoniaとしても知られるBo NingenのTaigen Kawabeをビートメイカー陣に迎え、2020年に東京の要衝・小岩 BUSHBASHのレーベルより発表した傑作EP『瑞典春氷』以降における機微、環境の変化をパックしている。
ミキシングは東京アンダーグラウンドにこの人ありと謳われる名匠・小林重典(Noise Room Recording Studio)とIRONSTONE、マスタリングはblack boboi、柴田聡子、家主らを手がける気鋭・風間 萌(studio Chatri)が担当。撮影は数々のライヴ・フォトやOMSB、PUNPEEらのアーティスト・フォトで知られる三田村 亮、デザインはイラストレーションやポリティカルなアクションへの尽力でも著名な惣田紗希によるもの。
発売・販売元 提供資料(2023/04/28)
スリーピース・バンド、Ms.Machineのヴォーカリストで、2019年よりソロ活動も開始したSAIによる初のフル作。AIWABEATSや東金B¥PASSのsostone、ドイツに拠点を置くLucra400、Bo NingenのTaigen Kawabeといった面々による不穏で時にメロウネスが滲むビートの上で、ラップとモノローグの間で引き裂かれたようなスタイルのヴォーカルが紡がれる。メランコリーと不機嫌にまみれた日常を詩的に昇華せず、醒めた視点で淡々と綴ったリリックが孕む、どこかECDにも通じる歪さが美しい。先鋭的かつクールといった形容だけで片付けられない切実さに裏打ちされた、それゆえに特別な輝きを放つ作品だ。
bounce (C)澤田大輔
タワーレコード(vol.474(2023年5月25日発行号)掲載)