ドイツのアレクサンダー・クリッヒェルは、クライネフとアレクセーエフからロシアン・ピアニズムを学んでおり、ラフマニノフは得意中の得意。今回のアルバムでは、ラフマニノフ生誕150周年を記念し、自身で解説まで執筆してラフマニノフの音楽について語り尽くします。
【作品について】解説書より抄訳
マイ・ラフマニノフ
アレクサンダー・クリッヒェル
A-G#-C#。私は心の底から震えました。それは青少年のピアノ・コンクールで、年長の出場者がラフマニノフの前奏曲嬰ハ短調を弾いてウォーミング・アップしていた時のことです。この出会いが私とラフマニノフが最も深い絆で結ばれる礎となったのです。今でもその時のことを思い出すと鳥肌が立つほどなので、この非常に個人的なアルバムのオープニングにこの曲を選びました。「マイ・ラフマニノフ」には、私の人生の重要な局面に寄り添ってくれた作品の数々を収録しています。
前奏曲嬰ハ短調 Op.3-2「鐘」
ラフマニノフが19歳の時に作曲した前奏曲嬰ハ短調は、彼の前奏曲の中で最もよく知られています。ラフマニノフが後にアメリカで「ミスター・シャープ・マイナー」と呼ばれるようになったのはこの曲の人気が理由です。
前奏曲ト短調 Op.23-5
よく知られたト短調は、優しさに満ちた中間部を持つ行進曲で、ラフマニノフの2番目の前奏曲として私が学び、その後、頻繁に演奏するようになった作品。私は今でもその魅力に取り憑かれています。
前奏曲嬰ト短調 Op.32-12
この曲は、最も興味深い曲のひとつです。片方の手が明確な方向に流れる一方で、もう片方の手は別の、より思索的な性格を暗示しているようで、それによって無邪気な流れに疑問を投げかけているようです。
コレッリの主題による変奏曲 Op.42
私が近年になってようやく取り組むようになった作品です。特にパンデミックの時期には、この作品の独特のエネルギーの流れが、私の支えとなってくれました。ラフマニノフは、友人であるヴァイオリンの名手フリッツ・クライスラーを通じてこのテーマを知り、この変奏曲も彼に捧げています。しかしコレッリがヴァイオリン・ソナタの中で使っていたこの主題は実はコレッリのものではなく、16世紀の舞曲「ラ・フォリア」です。
中世の香りを漂わせる5声のコラールによる主題の提示の後、シンコペーションの低音と音質・音域の変化がはっきりと聴き取れる第1変奏は衝撃的であり、20世紀へと一気に突入しています。
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発売・販売元 提供資料(2023/03/29)
音の絵 Op.39
ラフマニノフは、前奏曲の形式をそれまでの誰よりも発展させたと同時に、練習曲の形式を継承した枠を破り、音楽の物語性を強調するために「音の絵」という言葉まで用いました。ラフマニノフは、練習曲の形式をさらに進化させ、ヴィルトゥオーゾ的なテクニックよりも、音楽における強い感情的なメッセージに重きを置くようになりました。私自身、「音の絵」は、最初の南米と日本でのツアーで演奏したため、多くの特別な瞬間を思い起こさせます。
ヴォカリーズ Op.34-14
この曲は常に瞑想的で、私は愛する人に別れを告げなければならないときにしばしば慰めを求めました。あなたは一人ではないのだと、耳を傾け、気づかせてくれる真の友人のような存在です。
<アレクサンダー・クリッヒェル(ピアノ)>
1989年、ハンブルグでエンジニアの父と医学研究者の母の間に誕生。6歳からサンクトペテルブルク出身のナタリア・ポグリエワにピアノの指導を受け、2004年からハンブルク音楽演劇大学で学び、2007年からはハノーファー音楽演劇大学でヴラディーミル・クライネフに師事、その後、ロンドン王立音楽大学でドミトリー・アレクセーエフに師事。
その後、演奏活動が次第に認められて世界各地で演奏するようになり、2011年、SONY Classicalと契約を結び、2020年にはBerlin Classicsと契約。
クリッヒェルは子供の頃から音楽以外の分野でも活動しており、数学オリンピックのほか、ドイツ連邦外国語コンクールや、生物学分野での研究活動におけるドイツ連邦コンクールなどでも入賞を果たし、ウィリアム・スターン協会からは特に才能のある数学者としても認定を受けていました。CDは、Berlin Classics、SONY Classical、Profil、Telosから発売。
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発売・販売元 提供資料(2023/03/29)