イギリス人ドラマー、セバスチャン・ロックフォードのECM初リーダー作品でピアニスト/オルガニスト,キット・ダウンズとのデュオ作品。
ロックフォード曰くこの作品は"愛を持って、慰めの必要性から作られた、音の記憶"でロックフォードの父親であるスコットランド、アバディーンの詩人である父、ジェラルド・ロックフォード(1932-2019)と彼の家族に捧げられたもの。
10人兄弟の一人であるセブは、ジェラルドの死後すぐにほとんどの曲を書き、ピアニストのキット・ダウンズとともに、深い感情と賛美歌のような透明感のある演奏で、この楽曲群を届ける。最後の切ない曲「Even Now I Think Of Her」は、ジェラルド・ロックフォードが作曲したものでセバスチャンはこう説明する。「父が携帯電話に向かって歌い、私に送ってくれた曲です。これをKitに転送しました。彼はそれを聴いて、それから僕たちは始めたのです」。
ロックフォードは、父親が亡くなった後、「毎日、時には起きているときでさえ、音楽が私の中に入ってきて歌っているようだった」と回想している。最初は書くことに葛藤があり、書きたくなかったのですが、書いているうちに心地よさを感じ、また自分が感じていることを体で感じ取ることができるようになりました。だから、音楽的な意味で、これは私の日記になったのです」。しかし、このアルバムには、印象的なメロディやテーマと痛烈なコード進行が盛り込まれており、シンプルなグランドピアノと必要最低限のドラムキットの上に、多くのニュアンスと異なる音色と色調が広がっている。
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発売・販売元 提供資料(2022/11/22)
このアルバムは、ロックフォードが幼少期に住んでいたスコットランドの家で録音された。「祖父のピアノは父の兄弟から贈られたもので、私が父と呼んでいた素晴らしく心優しい人への賛辞でもあります」。ドラマーは、父親のピアノの前に座って曲を書きながら、原稿用紙にメモを取り、楽譜では表現できない細かい雰囲気や空気感を、必ず言葉で記録していった。「すべての楽曲に楽譜があり、音色はフィーリングの重要な部分であるため、ピアノがあるダイナミクスを超えるとフィーリングが損なわれると思い、キットとあるダイナミクスを実現することについて話をしました。作曲もこの時期の私にとっての慰めだったので、録音した音楽にはそれを反映させたかったんです」。
ロックフォードは、これまでアンディ・シェパードのECM作品『Trio Libero』(2012)、『Surrounded By Sea』(2015)、『Romaria』(2018)でドラムを担当。マンフレート・アイチャーに、『A Short Diary』の制作に前向きであるかどうか打診した。「マンフレートは、一緒に仕事をすることにしたアーティストが目指していることを集中的に強化し、開花させる方法を理解していると感じています。このアルバムが出来上がった経緯と、彼とのこれまでの経験から、彼はこの音楽を理解し、敏感になってくれるだろうと感じました」。その後、アイヒャーとの共同作業による綿密なプロダクションが行われ、ミュンヘンでミキシングが行われた。「マンフレートのミックスを聴くと、まるで私が作ったものを見せてもらっているようで、初めて音楽を聴いたような気がします。正直なところ、彼がどのようにして音楽をこのように鳴らしたのかさえ分かりませんが、彼が音楽のすべてを強化し、焦点を合わせてくれたように感じました」とコメントしている。
【パーソネル】Sebastian Rochford (ds, composition) Kit Downes(p)
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発売・販売元 提供資料(2022/11/22)
ドラマー、セバスチャン・ロックフォードが作曲し、ピアノのキット・ダウンズと演奏したとても慎ましく、温かい音楽が聴こえるてくる。キース・ジャレットとチャーリー・ヘイデンのデュオを思い出した。アルバムは、セバスチャンが詩人である父の死を機に、彼の家族のために書いた曲で構成されていて「音の記憶」と彼は言う。キットの弾くピアノは、こじんまりとした響き、まるでアップライトのようだ。キットは教会のオルガン、トリオやソロで弾くスケールの大きい音楽を演奏する印象があるが、フィドラーのアイダン・オルークとのプロジェクトでは、同様に物語を囁き合うような音楽が聴こえる。人の距離を近づける音楽が再び聴こえ始めた。
intoxicate (C)高見一樹
タワーレコード(vol.162(2023年2月20日発行号)掲載)