並外れたソングライティングの才能に磨きをかけ、2作連続の全英1位、全米7位も記録した2ndアルバム。
シングル「Brianstorm」「Fluorescent Adolescent」「Teddy Picker」を収録。商業的成功に加え、ブリット・アワードにて最優秀ブリティッシュ・アルバム賞、マーキュリー賞にノミネート、そしてグラミー賞にも2部門でノミネートを果たすなど、デビュー作同様かそれ以上の素晴らしい評価を獲得した名盤。
発売・販売元 提供資料(2022/11/21)
まさかあれほど愛したアークティック・モンキーズのデビュー作を、あっさり超えるほど好きになれるセカンド・アルバムを作るとは。そんな奇跡を、この4人の場合はあきらかな〈変化への意志〉と共に生み出した。ありえない。デビュー当時のインタビューで、「流行とは離れた場所で常に新しい音を作りたい」と話してくれたヴォーカルのアレックス・ターナー。その言葉どおり、このアルバムはどれをとっても現在のUK&USで鳴っているサウンドとは違う。ダイナミズム上等!なドラムは多彩なリズムを展開し、ギターは時にヘヴィーに、時に空間を活かし、華やかさを加える。カウンター・メロディーとして鳴るベースも通常のギター・ロックにはありえない存在感を持つし、そもそも曲の構造そのものが〈ポップ・ミュージック〉の常識を気持ち良く無視。そのすべてをアレックスによる言葉数の多いメロディーラインが先導する、その総合力こそが奇跡的。「生まれ変わるんじゃなくて、前に進んで進化する能力を持っていること。進化するのを恐れないということ。そしてポップ・ミュージックなんだけど、深みのあるおもしろいポップ・ミュージックを作りたいということ、かな」――このアルバムを完成させて気付いたという〈自分たちらしさ〉について問うと、アレックスはそう答えた。いまも変わらず冷静に、自分を見つめる彼。この回答こそがその内容のすべてを伝えている一枚だ。
bounce (C)妹沢 奈美
タワーレコード(2007年05月号掲載 (P72))
UK/USを中心に爆発的な盛り上がりを見せていたニュー・レイヴ・リヴァイヴァルが尻すぼみ状態となり、終焉へと向かっていた2005年下半期。そんなシーンの重苦しい空気をたった一枚のEPで吹き飛ばし、全世界をあっと言わせたのがアークティック・モンキーズだ。インターネット上での口コミから火が着いて、翌年にリリースしたデビュー・アルバムをあっさりチャート1位に放り込み、オアシス以降のUKで最大のバンドとなった……と、ここまで夢物語のような快進撃を続けてきた彼らが、1年半というインターヴァルを経て待望のニュー・アルバムを完成させた。血管沸騰必至のビートと瞬発力抜群のアークティック節は今作でも健在だが、同時にハード・ロック的な要素が加わるなど革命的な変化も遂げている(デビュー前に彼らはダットサンズのコピーをしていたり、ギターのジェイミー・クックがシステム・オブ・ア・ダウンの大ファンとのことなので、この変化には大いに頷けるのだが……)。ひとつ戸惑う点は、前作での“Fake Tales Of San Francisco”や“I Bet You Look Good On The Dancefloor”のようなキラー・トラックがないところ。ありったけのフックを前面に押し出した前作とは違い、今作はあきらかに聴き手にさまざまな発見をさせようとしている攻撃的かつ実験的な作品で、なるほど、聴くたびに新たな表情を見せて彼らが現在やりたかったことが少しずつ浮き彫りになっていく。つまり、ほっぺにニキビの残る少年たちが作ったとは到底思えない挑戦的な傑作なのだ。〈夢物語〉はこうして伝説への階段を登りはじめた!
bounce (C)白神 篤史
タワーレコード(2007年05月号掲載 (P72))