デヴィッド・ダン『天使と昆虫』リリース30 周年記念。現音からサイバーオカルトを横断する傑作!ダンの名解説を注釈つき日本語訳で掲載し、現音からサイバーオカルトを横断するこの傑作をアーカイブする。 (C)RS
JMD(2022/12/14)
デヴィッド・ダン『天使と昆虫』リリース30周年記念。現音からサイバーオカルトを横断する傑作!
ダンの名解説を注釈つき日本語訳で掲載し、現音からサイバーオカルトを横断するこの傑作をアーカイブする。
ルシエ、オリヴェロス等のケージの教え子世代よりも後のポスト・ケージ世代にあたるアメリカの作曲家、デヴィッド・ダンは、音響生態学・生物音響学の第一人者で、ICCでの展覧会「サイレント・ダイアローグ」(2007)でもレクチャーを行ったその筋の最先端。そんなダンのCDデビュー作『天使と昆虫』(1992)はオカルトと混沌が渦をまく傑作で、彼が取り組んでいる音を媒介にした自然環境・社会環境と生命体の相互作用、そのポスト・サウンドスケープの方向性もしっかり提示されている。(これを「環境音楽」と勘違いすれば100%クレーム返品!)
収録作のひとつ「49の善き天使の表」は、ルネサンス期の数学者・占星術師ジョン・ディーと霊媒エドワード・ケリーの神秘的な調査に基づく、コンピュータ処理された声のための作品。400年前、天使の言葉というふれこみでディーが発明した「エノク語」をテキストにし、天使(=エイリアン)の声の音響化を試みたオカルティックな実験作で、まるで魔方陣の上で空間が裂け、声が漏れてくるかのような怪しさとカッコ良さは悶絶必至!
もう一方の「混沌と池の創発的な精神」は、水辺に棲む昆虫が発する、人間が耳にすることのできないマイクロ音をデジタルフィールド録音し、人間界での可聴音に調整して提示されたオーディオコラージュ作品。ここでも音を媒介にした異界と人間の接近遭遇が図られるが、昆虫(=エイリアン)がコミュニケーションする音は「人間が作り出したほとんどの音楽よりも複雑な順序で構成されているかのような」(解説より)凄まじいもので、それを前に人間のなす術はない。ダンの転機となる重要作でもある。
発売・販売元 提供資料(2022/11/21)
最近の研究で亀も声を発することが明らかとなった。ケージが沈黙を求めてむしろ絶えることのない音のざわめきの中に我々が生活することを示したとき、聴覚の零度である沈黙はあくまで単に消失点を示す概念的なものに過ぎないことが明らかとなった。このデヴィッド・ダンの《天使と昆虫》は二作品を収録。人間には聴こえない水棲昆虫の発する音の存在を明らかにし、そこにある複雑な秩序が奏でる音楽を我々の可聴領で再現する。一方で、天使のルネッサンス期の学者と霊媒の研究に基づく、天使の言葉とされるエノク語をもとに作曲された声の作品。人の耳が外界と内界に二方向に設定した境界を超える。
intoxicate (C)高見一樹
タワーレコード(vol.161(2022年12月10日発行号)掲載)