これは素晴らしい。作曲家/ギタリストにして音楽評論家や作家としても活躍するアルトゥール・ネストロフスキーを父に持つシンガー、リヴィア・ネストロフスキー。そしてクラシックとMPB、モダンジャズといったジャンルを軽々と乗り越えるピアニスト、エンヒキ・アイゼンマンの双頭名義作がCIRCUSレーベルよりリリース。
選ばれた楽曲はオリジナルから「Sete Estrelas」(ギンガ/アルヂール・ブランキ)、「Insensatez」(ジョビン/アルヂール・ブランキ)、「Milagre dos Peixes」(ミルトン/フェルナンド・ブランチ)、「Noite de Santo Reis」(エロマール)、さらには「Zurich」「Xote Cavavo」などエルメート・パスコアルの楽曲を複数取り上げているのも興味深い。
録音はポール・ウインター所有のスタジオで行われたとのこと。端正かつ自在な表現をみせるリヴィア・ネストロフスキーの歌唱と、アンドレ・メマーリをも連想させるエイゼンマンの瑞々しいピアノのコンビネーションは、この世のものとは思えない美しさ。
発売・販売元 提供資料(2022/10/19)
透明感のある瑞々しいピアノの調べと、鳥の鳴き声のようなフィンガーノイズのような発声で幕を開ける美と奔放の極み。アンドレ・メマーリを引き合いに出されることも多くパスコアールとも通じるリリカルなピアニスト、エンヒキ・アイゼンマンの、間の捉え方や声に対する想像力に富んだレスポンス、そしてその早さも驚愕だが、とにかくリヴィア・ネストロフスキーのスキャットを多用した歌唱が凄まじく、というかもうこちらが思う歌さえ彼女にとっては枠でしかないのかもしれず、まるでパルクールのような自由自在さで、音楽の中で表現出来る声の可能性を最大限(としか思えない)引き出した恐るべきデュオ作品。
intoxicate (C)小畑雄巨
タワーレコード(vol.161(2022年12月10日発行号)掲載)