名匠ジャック・リヴェットによる魔術的ファンタジーの世界。
映画に眩暈するこの愉楽の時─

『セリーヌとジュリーは舟でゆく』
映画を変革させたヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波)の異才ジャック・リヴェット監督による超現実的自由の幻想。パリの公園のベンチで魔術の本を読んでいた司書ジュリーが、偶然に魔術師のセリーヌと出会ったことから、かつてない奇妙な冒険が始まる。「不思議の国のアリス」的迷宮を思わせる冒頭から始まる本作は、セリーヌ役のジュリエット・ベルトとジュリー役のドミニク・ラブリエが書き始めた台本から出発し構成された。幻想と現実の境界線を軽やかに飛び越えて自由に入れ替わる主人公たちのユーモラスなやりとり、様々に彩られたオブジェやファッションに惑わされ、見るものはリヴェット・マジックの虜となるだろう。なお劇中で起こる屋敷内の事件はヘンリー・ジェイムズの小説から翻案されたもの。遊び心に溢れた傑作にしてリヴェット随一の人気作。

『北の橋』
映画を変革させたヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波)の異才ジャック・リヴェット監督による超現実的自由の幻想。『セリーヌとジュリーは舟でゆく』が「不思議の国のアリス」ならば、女優ビュル・オジェと実娘のパスカル・オジェ共演の本作はリヴェット版現代の「ドン・キホーテ」。突然現れた閉所恐怖症の女テロリストのために、彼女の昔の恋人との連絡を引き受ける少女蜂ストは、鎧の代わりに革ジャンを羽織り、馬の代わりにバイク、兜の代わりにヘルメットをかぶってドン・キホーテを演じてみせる。パリの街と符合する双六ゲームの上で、日常を生きながらにして幻想に駆られた俳優たちの身体と、現実の中から立ち現れてくるファンタジーが結びつく。リアルで不可思議のリヴェット・マジックに魅了される傑作。