オランダのピアニスト、ウォルフルト・ブレデロードによる、ECM4枚目のアルバム。
これまでトリオやカルテットで作品をリリースしてきたが、今作はこれまでと異なる特別なプロジェクトでピアノ、弦楽四重奏、パーカッションのための組曲。
もともとは第一次世界大戦の終結から100年を記念する音楽の依頼を受けてブレデロードが作曲したもので、2018年11月に初演されたが、、その間に、より広く、より個人的な意味を具現化するようになったという。
「さまざまなレベルで、この音楽は悲しみや喪失、そして再び立ち上がることを学ぶことと関係しています」とブレデロードはコメント。この音楽には傷つきやすさと回復力があり、感情の起伏が激しく、荒涼としたムードと希望に満ちたムードが交互に現れる。
本プロジェクトに参加したミュージシャン音楽家たちは、ハーグの王立音楽院の学生時代からの友人。マタンギ弦楽四重奏団は、ウォルフルト・ブレデロードの演劇音楽の公演でしばしば共演しており、バロック音楽、現代作曲、ジャズなど幅広いレパートリーを持ち、オランダで最も多才な弦楽四重奏団として高い評価を受けている。(最近はシュニトケ、シルベストロフ、ショスタコーヴィチの録音で注目されている)。2014年には、マタンギ・カルテットが自身のアルバムに、ルイ・アンドリーセンやチック・コリアの作品と並んでブレデロードの音楽を収録。プロジェクトが進むにつれ、マタンギのプレイヤーたちは、その内部でますます自由を見出し、その即興セクションにも積極的に参加するようになった。
ドラマーであるヨースト・ライバートは、2004年からブレデロデと共にジャンルを超えて活動している。ユーリ・ホーニングとジャズを演奏したり、パーカッションとピアノのデュエットではなく、「プリペアド・ピアノを一緒に演奏するかのように」一つの音の中に個々のアイデンティティを沈めようとする即興デュオで活動しており、この感性は、『Ruins and Remains』でのアプローチにも反映されている。
【パーソネル】Wolfert Brederode: piano; Joost Lijbaart: drums, percussion
The Matangi Quartet: Maria-Paula Majoor, Daniel Torrico Manacho: violins; Karsten Kleijer: viola; Arno van der Vuurst: violoncello;
発売・販売元 提供資料(2022/09/02)
小編成の弦楽アンサンブルを伴う音楽を耳にする機会が日本国内でも増えてきた。現在、フランスに移住した中島ノブユキが日本にいた頃からだったか、コンポジションに弦が予めインストゥルメンテーションされた音楽はずいぶん馴染み深いものとなった。このヴォルフェルト・ブレデローデは、ピアニスト、作曲家。これまでにECMのレコーディングに数枚参加し、自身のアルバムもこの新譜を含め同レーベルに3枚残している。トリオ、カルテットとジャズをレコーディングしてきたが、今回、弦を交えたアンサンブルでのレコーディングとなった。日本でも愛聴される可能性を秘めた、視覚的で、透明、クワイエットな音楽だが、妙にほろ苦い感じがする。
intoxicate (C)高見一樹
タワーレコード(vol.159(2022年8月20日発行号)掲載)