7月末に新型コロナウイルスに罹患した曽我部恵一がその療養期間中に制作したアルバム。自身の最大の武器である歌と言葉から離れ、抽象画を描くように音のレイヤーを塗り重ねた先に見えてくる世界。手短にあるいくつかの楽器を使い演奏録音されたこのアンビエント作品は、聴く者の感情の奥深い部分へアクセスし、様々な記憶や風景を呼び起こさせる。 (C)RS
JMD(2022/08/31)
曽我部恵一、コロナ療養中に制作したアンビエントアルバムをリリース。CDは9月17日発売。
7月末に新型コロナウイルスに罹患した曽我部恵一がその療養期間中に制作したアルバム『Memories & Remedies』。自身の最大の武器である歌と言葉から離れ、抽象画を描くように音のレイヤーを塗り重ねた先に見えてくる世界。手短にあるいくつかの楽器を使い演奏録音されたこのアンビエント作品は、聴く者の感情の奥深い部分へアクセスし、様々な記憶や風景を呼び起こさせる。
曽我部が病床で幻視したかも知れない遠い景色を想像させる「父の肖像-Portrait Of Father」「母の住む家-House Where Mother Lives」というタイトルが冠せられた曲たち。始まりも終わりもないようなサウンドスケープの奥から、言葉のない世界で語られる果てしのないストーリーが聴こえてくる。
高熱が続いた後、半ば無意識に導かれながら紡いだこのアルバムの中に、コロナ禍における音楽のあり方の彼なりの模索を見て取ることもできる。それは個の内に存在する愛やぬくもりの手触りを再確認させるものであるだろうし、分断された希望を繋ぐための調和をもたらすもののはずだ。
シューゲイザー的エモーションが渦巻く最終曲は、ガルシア=マルケス『コレラの時代の愛』に倣い「コロナの時代の愛-Love In The Time Of COVID」と題された。時代に翻弄されることから逃れられない音楽家の、あるドキュメントだ。
発売・販売元 提供資料(2022/08/25)
曽我部恵一によるアンビエント――と表すだけでは、莫大なディスコグラフィーを抱えた音楽家の一側面として意外性はないかもしれないが、コロナ療養中に作られた作品となればやや違って響きやしないか。夢うつつの状態を音像化したかのようなドローンに、ギターやメロディカが溶けていく様は、かつて見た風景と空想した世界の境目を曖昧にしていく。パンデミックの時代のサイケ、かつリアルなダイアリー。
bounce (C)田中亮太
タワーレコード(vol.466(2022年9月25日発行号)掲載)