長き沈黙が破られ、新たな伝説の新章が幕を開ける――。
カオティック・プログレッシヴとも言うべき混沌とした楽曲構成と壮絶なプレイヤビリティで確固たる人気を誇る、オマー・ロドリゲス・ロペスとセドリック・ビクスラー・ザヴァラの二人からなる音楽集団、マーズ・ヴォルタ。待望の復活を遂げた彼らの約10年振りとなる新作スタジオ・アルバム『THE MARS VOLTA』完成。進化を続ける彼らの新たなサウンドに耳を傾けよ。アナログLPも同時発売。
カオティック・プログレッシヴとも言うべき混沌とした楽曲構成と壮絶なプレイヤビリティで確固たる人気を誇る、オマー・ロドリゲス・ロペスとセドリック・ビクスラー・ザヴァラの二人からなる音楽集団、マーズ・ヴォルタ。エモ/スクリーモ、メタル、プログレッシヴ、ラテン、サルサ、ダブ…、世界に存在する全ての音楽スタイルをミックスさせ、そこに超絶なインプロヴィゼーションを掛け合わせることで生まれるえもいわれぬ高揚感と壮絶な実験性に満ちたサウンドをかき鳴らす彼らは、真のプログレッシヴ・アーティストだと言えるだろう。
2012年の通算6作目『NOCTOURNIQUET』をリリースした後、2013年にセドリック・ビクスラー・ザヴァラが脱退を発表し解散。しかし二人はすぐに合流し、新たなプロジェクトANTEMASQUEやアット・ザ・ドライヴ・インとしてツアーやレコーディング・セッションを行っている。近年再結成の噂が幾度となく囁かれてきたマーズ・ヴォルタだが、2021年にキャリアを総括する豪華ボックス・セット『LA REALIDAD DE LOS SUENOS』のリリースに続き、今年6月アート・インスタレーション『L'ytome Hodorxi Telesterion』を通じ再結成を発表。同時に発表された新曲「Blacklight Shine」と北米ツアーに、ニュー・アルバムへの期待が一気に高まった。
そして遂に発表となった待望の再結成アルバムのリリース。マーズ・ヴォルタとしては10年振りとなる新作はセルフ・タイトルとなる『THE MARS VOLTA』。収録曲の中には、既に発表されている「Blacklight Shine」、「Graveyard Love」、そして「Virgil」の3曲のシングルも含まれている。長き休止期間から復活した彼らのサウンドは、マーズ・ヴォルタのパラダイムシフトとも呼べそうな作品になっているという。この新作では長年築き上げられてきた"マーズ・ヴォルタ的特徴"のいくつかを振り落としている。4分を超える長編の楽曲は本作では2曲しか存在しておらず、さらに彼らの初期作品にみられた高揚感に満ちた磨き抜かれたプログレッシヴなスタイルも姿をひそめている。その代わり『THE MARS VOLTA』には、繊細な煌めきと、洗練され、また激しい技巧とソングライティングに支えられたカリブ風のリズムが躍動している。これこそマーズ・ヴォルタの現時点で最も成熟し、最も簡明で専心した姿を捉えた作品と呼べるだろう。このアルバムには、オマー・ロドリゲス・ロペスのアンダーグラウンドなポップ・メロディーにセドリック・ビクスラー・ザヴァラのオカルトや悪の政府を描いたダークなSF世界を融合させた彼らのサウンドと音世界を最大出力したものが収められているのだ。自らの情熱、詞世界、そしてパワーを指先に蒸留させた『THE MARS VOLTA』は彼ら史上最高に聴きやすい作品にもなっているのだ。
発売・販売元 提供資料(2022/08/18)
10年ぶりにリリースした7枚目のアルバム。円熟なのか、新たな挑戦なのか、エモコア由来の激しさやプログレならではの長尺のインプロは影を潜め、クイーン風のハーモニーも聴かせる"Cerulea"をはじめとするバラードを中心に、じっくりと聴かせる曲で勝負。これまでで一番聴きやすいという評判も大いに頷ける。もちろん、聴きどころはバラードだけにとどまらない。手数の多い演奏に熱を込めた泣きのラテン・ファンク曲"Blank Condolences"、美しいメロディーが胸に染みるトラッド・フォーク調のプログレ曲"Tourmaline"など、激しさに頼らずに打ち出した新たなバンド像は大きな収穫と言えるだろう。賛否両論あるかもしれないが、10年ぶりだ。それぐらいやらなきゃ意味がない。
bounce (C)山口智男
タワーレコード(vol.467(2022年10月25日発行号)掲載)