Yankee Hotel Foxtrot (Super Deluxe Edition) ［11LP+CD］

これがウィルコの金字塔。
ウィルコがオルタナ・カントリーというジャンルを越え、アメリカを体現するロック・バンドへ成長した金字塔的アルバムが、発売20周年を記念し、スペシャル・エディションで蘇る!オリジナル・アルバムの最新リマスター音源に、アルバム収録曲の別ヴァージョンやライヴ音源を含む何と82曲もの未発表音源を収録した超充実のディープなアナログ11枚+1CDからなるスーパー・デラックス・エディションも登場!

ジャンルに縛られず、実験的な試みを重ねながら、豊かな創造性を磨いてきた現代アメリカン・ミュージック・シーンにおける最重要バンド、ウィルコ。30年近くにわたり素晴らしい作品を発表し続け、魂を揺さぶるライヴ・パフォーマンスでファンを魅了し続ける彼らが、オルタナ・カントリーというジャンルを越えて、アメリカを体現するロック・バンドへ成長した記念碑的名盤、それが2002年に発表された通算4作目のスタジオ・アルバム『YANKEE HOTEL FOXTROT』だ。

ノンサッチ・レーベル移籍第1弾となる『YANKEE HOTEL FOXTROT』だが、その制作は決して順風満帆ではなかった。ウィルコはメンバー・チェンジの激しいバンドだったが、『ヤンキー・ホテル～』制作中、トウィーディーと、彼に次いで音楽的主導権を握っていたジェイ・ベネットとの確執が深まり、結果、ジェイは脱退、また、同作レコーディング中、所属のメジャー・レーベルから解雇されてしまう。(この時のレコーディング・セッションはドキュメンタリー作品「I Am Trying to Break Your Heart: A Film About Wilco」に収められている)そんな苦難を経て完成した本作は、高い評価を集め、MOJO、NME、Q Magazine、ROLLING STONE、UNCUT等数多くの音楽メディアの2002年度年間チャートにエントリーされた他、ROLLING STONE誌が選ぶ2000年代のベスト・アルバムの3位にも輝いた。またここ日本でもアルバムが発売された翌年、マジック・ロック・アウト・フェスティヴァルで初来日公演を実現させている。

ウィルコ最大のヒット・アルバムとなった『YANKEE HOTEL FOXTROT』が発売20周年を迎える今年、最新リマスター音源のアニヴァーサリー・エディションで蘇る。しかも2CD、2LP、8CD SUPER DELUXE EDITION、11LP+1CD SUPER DELUXE EDITION、7LP DELUXE EDITIONの、多種多様な5形態での発売となる(この他にデジタル配信でも発売)。(1/2)

今回発売となる形態の中で最も内容が濃いのが、アナログLP11枚とCD1枚からなるSUPER DELUXE EDITIONだ。LP1&2にはオリジナル・アルバムの2022年最新リマスター音源を収録。そしてLP3からLP7の5枚に収められているのはアルバムの制作過程で生まれた膨大な数のアルバム収録曲の"別ヴァージョン"や"別ミックス"。またLP8にはデモやインストゥルメンタル・ヴァージョンを収録。その他にもLP9からLP11の3枚には、アルバム発売後の2002年7月23日にセントルイスにあるThe Pageantで行ったライヴを完全収録している。またCDには、シカゴのラジオ局WXRTが収録したスタジオ・ライヴをメンバーのインタビューともども収録。何と82曲もの未発表音源をフィーチャーした超充実の内容となっている。

11枚のアナログLPとCD以外にもボックス・セットには、THE REPLACEMENTの伝記の著者でも知られる音楽ジャーナリストBob Mehrによる新規アルバム・ノーツにメンバーのジェフ・トゥイーディやグレン・コッチェ、アルバムのミックスを手掛けたジム・オルークのインタビュー、さらにレコーディング風景を捉えた貴重な写真を多数掲載した豪華ブックレットも収められている。

アルバムの20周年を記念して、ウィルコは"YANKEE HOTEL FOXTROT"の完全再現ライヴを4月19日から24日かけてNYとシカゴで行う。ジャンルに縛られず、実験的な試みを重ねながら、豊かな創造性を磨いている彼らの記念碑的アルバムの魅力を再発見できる全ウィルコ・ファン必聴の作品だ。(2/2)

Few bands can call themselves contemporaries of both the heartbreakingly earnest self-destruction of Whiskeytown and the alienating experimentation of Radioheads post-millennial releases, but on the painstaking Yankee Hotel Foxtrot, Wilco seem to have done just that. In early 2001, the Chicago-area band focused on recording their fourth album, which ultimately led to the departure of guitarist Jay Bennett and tensions with their record label. Unwilling to change the album to make it more commercially viable, the band bought the finished studio tapes from Warner/Reprise for 50,000 dollars and left the label altogether. The turmoil surrounding the recording and distribution of the album in no way diminishes the sheer quality of the genre-spanning pop songs written by frontman Jeff Tweedy and his bandmates. After throwing off the limiting shackles of the alt-country tag that they had been saddled with through their 1996 double album Being There, Wilco experimented heavily with the elaborate constructs surrounding their simple melodies on Summerteeth. The long-anticipated Yankee Hotel Foxtrot continues their genre-jumping and worthwhile experimentation. The sprawling, nonsensical "I Am Trying to Break Your Heart" is as charmingly bleak as anything Tweedy has written to date, while the positively joyous "Heavy Metal Drummer" jangles through bright choruses and summery reminiscences. Similarly, "Kamera" dispels the opening tracks gray with a warm acoustic guitar and mixer/multi-instrumentalist/"fifth Beatle" Jim ORourkes unusual production. The true high points of the album are when the songwriting is at its most introspective, as it is during the heartwrenching "Ashes of American Flags," which takes on an eerie poignancy in the wake of the attacks at the World Trade Center. "All my lies are always wishes," Tweedy sings, "I know I would die if I could come back new." As is the case with many great artists, the evolution of the band can push the music into places that many listeners (and record companies for that matter) may not be comfortable with, but, in the case of Wilco, their growth has steadily led them into more progressive territory. While their songs still maintain the loose intimacy that was apparent on their debut A.M., the music has matured to reveal a complexity that is rare in pop music, yet showcased perfectly on Yankee Hotel Foxtrot. ~ Zac Johnson

ウィルコと聞けば〈良質なロック・バンド〉というイメージもあるけれど、さにあらず。彼らには濁った水さえすすんで口にするようなしぶとさと懐の広さもあれば、したたかさもある。さて、問題の新作。もちろん核心で熱を帯びるのはジェフ・トゥイーディーの歌い口。とはいえ〈歌を大事にする〉みたいなありきたりのプロダクションはなし。ミックスにジム・オルークを迎えた本作では、そんな期待は裏切られて当然。ここにあるのは豊かなメロディーと、伝統から繋がるコンポジション。そして、その表裏一体に、とんでもなく編みこまれた音のコラージュが横たわる仕掛け。不穏なストリングス、突如インサートされるフリーキーなギター・ソロ、ノイズ、ブレイクビーツと生ドラムの追いかけっこ……。陰と陽を渾然一体に練りこんで、またここで陽の目を見るひとつの〈ディスカヴァー・アメリカ〉。その美しいさま。涙の逸品。ウィルコは振り返らない。
bounce (C)福田教雄