モノクロの世界を、穏やかな音が優しく彩っていく。
UKロンドン在住SSW、Natalie Evansが新たなステージへ踏み出す2022年作品。
一度聴いたら忘れられない柔らかなヴォーカル、折り重なる美しいコーラスワーク。そして幻想的な白昼夢の中の淡い記憶と、日々の日記のように綴られた歌詞を、自身が演奏するピアノ、アコースティックギター、ハープなどの楽器たちが優しく包み込む。フォーク・シンガーGregory And The Hawkの持つ素朴さや、同世代でもあるPhoebe BridgersやJulien Bakerとも共鳴するような繊細さと親しみやすさを併せ持つ。
しかし本作の持つ魅力はそれだけではない。前作アルバム『Better At Night』では、慣れ親しんだエモ/ポストロック由来のフィンガーピッキング・スタイルを生かし、バンドサウンドをメインとしたポップな作品を作ったが、あれから4年。アコースティックサウンドをベースとしつつも、前作とは一味も二味も違う、ピアノやハープを主体としたトラックが印象的な、優雅かつ洗練された作品となった。
ピアノとギターが輝くような音像を映し出す「Driving At Home」、思わず目を閉じ没入してしまうようなインストゥルメンタル曲や、軽やかな初夏の匂いがしてくるような「To Go On」。そしてラストを締めくくる「Guest Room」では切なくも安らぎにも似た感情を、しなやかに流れるようなピアノタッチで弾きながら歌うなど、音を聴くだけで脳裏に情景が浮かぶようなソングライティングにさらに磨きがかかっている。独特かつ琴線に触れるメロディは、Natalie自身がこれまでに触れてきたインディー・エモ、マスロックなサウンドスタイルと、フォーク的なサウンドが溶け合うオリジナリティ溢れるものだ。
これまで自身が関わりの深かったフィールドから大きく羽ばたき、確実に新たなステージへと歩み始めたNatalie Evans。世界的パンデミックの渦中、自身の感性を研ぎ澄まし自由な気持ちで製作された本作は、時にフォーキーに、時にアンビエントに、色を失ってしまったようなこの世界をハープ、ピアノ、ギターの音色で鮮やかに彩っていく。自分自身の心と記憶と向き合い、"今ここで起きていることは決して無駄な事ではなく、必ず未来に繋がって行く"ということを示唆するようなメッセージは、今は小さなものかもしれない。だが、必ずや聴く人々に癒しと前向きな気持ちを与えていくだろう。
発売・販売元 提供資料(2022/11/22)
モノクロの世界を、穏やかな音が優しく彩っていく。UKロンドン在住SSW、Natalie Evansが新たなステージへ踏み出す2022年作品。 (C)RS
JMD(2022/04/29)