フィールドを越えて活動するトランペッター類家心平が、自身のバンド"RS5pb"(Ruike Shinpei 5 pieces band)他で演奏を共にするピアニスト中嶋錠二と録音した感動的なデュオ・アルバム。プログレッシヴでエフェクティヴ、更にポストロック的なサウンドをアルバム録音で数多く残している類家心平が、全編スロー・ナンバーを中心とした演奏によってネクスト・フェイズへと進んだ意欲作。 (C)RS
JMD(2022/03/17)
トランペットとピアノだけで同郷の二人が生まれ故郷で描いた美しき音の結晶。
A.C.ジョビン、フランシス・レイ、スピネッタ他のカバー曲が中心の凛とした静寂の世界。
フィールドを越えて活動するトランペッター類家心平が、自身のバンド「RS5pb」(Ruike Shinpei 5 pieces band)他で演奏を共にするピアニスト中嶋錠二と録音した感動的なデュオ・アルバム。プログレッシヴでエフェクティヴ、更にポストロック的なサウンドをアルバム録音で数多く残している類家心平が、全編スロー・ナンバーを中心とした演奏によってネクスト・フェイズへと進んだ意欲作。
ほぼ毎日のようにライヴ活動をしてアルバム制作に大きな執着のなかった類家心平が、パンデミック禍で活動を制限された2020年、作品を残すことの意味や重要性を痛感。同時期に故郷・八戸の音楽的ベース基地でもある「saule branche shincho」からのオファーがあり同郷の中嶋錠二とのデュオ企画が実現した。コロナ禍の影響で実家に帰省できない等生まれ故郷との距離感を感じていた状況下だけに、八戸人脈と共に故郷で録音するという代謝作用のような出来事によって二人の演奏は自由と深みのある陰影、艶を増している。
カヴァー曲は、フレッド・ハーシュ他多くのミュージシャンが取り上げたポール・モチアンの名曲(1)、アルゼンチン・ロックを牽引したスピネッタがスピネッタ・ハーデ名義のラスト・アルバム「MADRE EN ANOS LUZ」で残した哀愁曲(2)、マイルス・デイヴィス『クールの誕生』から(3)、名作フランス映画『男と女』から(4)(邦題「愛は私たちより強く」)、アントニオ・カルロス・ジョビンが愛娘に捧げた名曲(8)、さらにスタンダード(7)(11)と美意識溢れる多彩なセレクト。オリジナル曲もRS5pbでもお馴染み、リチャード・ブローティガンの小説「愛のゆくえ」に出てくる女性ヴァイダをモチーフにした名曲(9)をはじめとした耽美的な世界ばかり。
発売・販売元 提供資料(2022/03/16)
菊地成孔ダブ・セクステット、DCPRGでの活躍でも有名な類家心平のソロアルバム。本作は数多く共演しているピアニストの中嶋錠二とのデュオの編成になっている。類家心平と中嶋錠二は2014年にも『N.40°』というアルバムを録音しており、8年ぶりの邂逅になる。ジャム・バンドやポストロック的なサウンドでのアプローチが目立つ類家心平だが、本作ではスローナンバーを中心としたリリカルな表現に挑んでいる。全11曲中3曲を類家心平のオリジナルソングで、中でもリチャード・ブローティガンの小説『愛のゆくえ』に出てくる女性ヴァイダをモチーフにした《Vida》は美しい名曲だ。
intoxicate (C)荻原慎介
タワーレコード(vol.158(2022年6月20日発行号)掲載)
静かな夜でした。
出張の夜の窓の外はさっきまで雨で、澄んだ空気の匂いと、駅から遠ざかるタクシーのバックライトが、なぜか人恋しくなりました。
そんな夜にこのアルバムが寄り添ってくれました。
かすれた音の中に、不意に透明な声が主張し、涙を流しているようでした。
どう言う人生の時間を過ごして来たら、こう言う表現が生まれるんだろうと感じさせられる一枚です。
何度聴いても、その度に新しい輝きの一瞬が見つけ出せます。