ロレイン・ジェイムスの別プロジェクト、全天候型アンビエントの秀作
<Hyperdub>からの2作が強烈なインパクトをもってエレクトロニック・ミュージックシーンに躍進したロレイン・ジェイムスによる'22年の別名義作。全てのトラックが摂氏で表記され、寒さと暖かさが表裏するこのジャケットからして既に名盤認定したいが、そんな期待に違わぬ程、内容はすこぶる良い。さし込む朝日に朦朧とする浮遊アンビエント(1)から誘い、肌に纏わる凍てつく冷気の如き(2)、90年代<Warp>サウンドとも共鳴する(3)、OPN的な知性を感じる(11)等々、僅かな温度差でもこれほど豊かに感受できることを再発見させられ、この温度、この季節にどんな感触を得ていただろう?と記憶を呼び起こす。20年代クラブシーンをより鮮やかに色付けする全天候型アンビエント~IDMの秀作です。
タワーレコード(2023/08/11)
<Hyperdub>から良作をリリースしている Loraine Jamesが、自身が長年ファンだったという<Ghoslty International>から別名義 Whatever The Weatherをリリース決定!アルバム・タイトルにちなんで各曲名は全て温度になっており、キーボードの即興演奏やヴォーカルの実験を取り入れ、アトモスフィアや音色を形作ることを優先したモードで、静と動、寒と暖を行き交う心地よくも刺激的な音世界!アンビエント~IDM を横断する 20年代エレクトロニカの紛れもない傑作!マスタリングは Telefon Tel Aviv が担当しており、TTA ファンも必聴の内容! (C)RS
JMD(2022/03/15)
これは秀逸!アンビエント+20年代IDM!?
Hyperdubから良作をリリースしているLoraine Jamesが、自身が長年ファンだったというGhoslty Internationalから別名義Whatever The Weatherをリリース決定!
アルバム・タイトルにちなんで各曲名は全て温度になっており、キーボードの即興演奏やヴォーカルの実験を取り入れ、アトモスフィアや音色を形作ることを優先したモードで、静と動、寒と暖を行き交う心地よくも刺激的な音世界!アンビエント~IDMを横断する20年代エレクトロニカの紛れもない傑作!
マスタリングはTelefon Tel Avivが担当しており、TTAファンも必聴の内容!
ノース・ロンドンのプロデューサー、Loraine Jamesは、パンデミック以降の激動のこの2年間をアートを通じて駆け抜けてきた。NTSラジオでマンスリーのショーを始め、Bandcampでいくつかのプロジェクトを共有し、Hyperdubの2つのリリース、『Nothing EP』と、2019年のブレイクした作である『For You and I』に続くアルバム『Reflection』の録音を行った。また、また、10代頃以来の未知の創造的な領域へと戻ってきた。クラブ・ミュージックとは対照的に、このモードではキーボードの即興演奏とヴォーカルの実験が行われ、パーカッシヴな構造を捨ててアトモスフィアと音色の形成が優先されている。このように、異なる頭脳空間から、新しい座標と気候が生まれ、「Whatever The Weather」という新しいプロジェクトが誕生した。本アルバムのマスタリングを依頼したTelefon Tel Aviv、HTRK(シンガーのJonnine Standishは『Nothing EP』に参加)、Lusine(Loraineがリミックスを手がけた)など、アンビエントと親和性の高いGhostly Internationalのアーティストたちの長年のファンであるLoraineはGhostlyが空気感のあるトランスポーター的な楽曲で構成された、このセイム・タイトル・アルバム『Whatever The Weather』の理想的な拠点であると考え、このリリースへと至った。(1/2)
発売・販売元 提供資料(2022/03/10)
『Whatever The Weather』のタイトルは全て温度数で表されており、シンプルなパラメーターによって、ムードを盛り上げるためのニュアンスに焦点を当てることができる。彼女の浮遊する宇宙は変動し、曲ごとに凍ったり、解けたり、揺れたり、花開いたりしていく。セッションでのジャムを元にしたアプローチを「自由な流れまかせ、私が終わったように感じたら止める」と説明し、彼女の潜在意識によってリードできるようにする。その即興演奏は、ひとつの環境の上を通過する突然の天候のような、本質的な流動性を持っている。場所は固定されているように感じるが、状況は変化していく。
アルバムの冒頭を飾る「25℃」は、柔らかなハミングとキーボードが降り注ぐ太陽のような曲。この曲は最も長い曲で、温和な風が上下すると至福の時が訪れるという点であり、安定した印象を与えるが、彼女の作品は組織的な混沌を好む傾向がある故に、その様相は当然ながら一時的なものである。このユートピアから、最もメランコリックな 「0℃」へと急降下し、浮遊する孤立したシンセ・ラインは、冷厳なビートと静電気の嵐を横切っていく。続く「17°C」では跳ね上がるような勢いのキーボードに車のクラクション、ブレーキの音、横断歩道の会話などのサンプリングが織り交ぜられ、ジャングル~ドラムン調の変則ブレイクビーツが駆け抜けるIDM調のキラー・チューンをみせる。
この作品の一部では、Loraineはネオクラシックに傾倒し、流れ落ちるピアノの鍵盤と暖かいディレイの物悲しいヴィネットを表現している。前半最後の「2°C (Intermittent Rain)」は嵐のような短いループで終え、「10℃」ではリセットされた感覚が浸透する。エコーをかけたオルガンの上で直感的に音を混ざ、ジャズ志向を示唆する非定型のリズムにロックしたり、外したりしている。「4℃」と「30℃」は、彼女のヴォーカルの実験の幅を示すもので、前者はリズミカルで別世界のような効果があり、後者は最もストレートな歌声(彼女はデフトーンズのチノ・モレノとアメリカン・フットボールのマイク・キンセラをインスピレーション源として挙げています)を聴くことができる。
本作は「36°C」で幕を閉じるが、この曲は冒頭の「25℃」のようにシンセサイザーのコーラスが心地よく、空を飛ぶようなこのコレクションにふさわしいブックエンドとして機能している。周期的、季節的、そして予測不可能な、まさにその名の通りであり、アンビエント~IDMを横断する20年代エレクトロニカの紛れもない傑作だ。
マスタリングはTelefon Tel Avivが担当している。CDリリースは日本のみで、レコードには未収録(デジタルには収録)のボーナ・トラックが追加されている。(2/2)
発売・販売元 提供資料(2022/03/10)
ハイパーダブでの『Reflection』も記憶に新しいロレイン・ジェイムズの変名プロジェクトがセルフ・タイトル作をリリース。浮遊するアンビエンスとIDM的なビートを融合し、ゴーストリー・インターナショナルのレーベル・カラーに合ったサウンドを器用に展開していることにも驚かされる。"25℃"0℃"など曲名を気温で表しているあたりは心憎いところ。マスタリングをテレフォン・テル・アヴィヴが手掛けているのも興味深い。
bounce (C)野村有正
タワーレコード(vol.461(2022年4月25日発行号)掲載)