モスクワ生まれ、ニューヨークで花開いた個性派シンガー・ソングライター、レジーナ・スペクターが紡ぐ新たな物語。
様々な声音とクラシックをバックグラインドとした多様な音楽スタイル、そして物語性豊かな歌詞を独自の音世界へと昇華させた彼女の最も実験的で刺激的な最新作『HOME, BEFORE AND AFTER』完成。
旧ソ連に生まれ、現在はアメリカはニューヨークを拠点に活躍するシンガー・ソングライター、レジーナ・スペクター。クラシックをバックグラウンドに持った音楽スタイルと、物語性豊かな詩世界、そしてフィオナ・アップルやトーリ・エイモスなどと比較される美声の持ち主で、デビュー当時は「ブロンクスのビョーク」とも称された個性溢れるアーティストである。
1990年代末からニューヨークのイースト・ヴィレッジを中心としたアンチ・フォーク・シーンで注目を集めていた彼女は、2000年代初めに自主製作でCDを発表していたが、2003年から2004年にかけてストロークスの全米ツアーやキングス・オブ・レオンのヨーロッパ・ツアーでオープニング・アクトに抜擢されるようになり、2004年にワーナー・ブラザース・レコーズと契約し、レーベル第1弾となる『SOVIET KITSCH』をリリース。続く2006年に発表した『BEGIN TO HOPE』は、ビルボード200アルバム・チャートの20位を記録。またアルバムからは「Fidelity」がシングル・ヒットとなった。さらに2009年の『FAR』、2012年の『WHAT WE SAW FROM THE CHEAP SEATS』はそれぞれ米ビルボード200アルバム・チャートの3位を飾り、オーストラリアでもTOP10、全英アルバム・チャートでもTOP30にエントリーするヒットとなった。
その彼女が2016年の『REMEMBER US TO LIFE』に続けてリリースするのが、通算8作目のスタジオ・アルバムとなる『HOME, BEFORE AND AFTER』だ。アップステート・ニューヨークで、プロデューサーのジョン・コングルトンとともにレコーディングされた本作は(ちなみにレジーナは共同プロデューサーとして名を連ねている)、とてもニューヨークらしい作品だという。アルバムからは先行シングルとして、シュールで美しいバラード「Becoming All Alone」とスリリングなストーリーテリングに聴くものを引き込んでいく「Up The Mountain」がリリースされているが、どちらもドラマティックなストリングスとビートが印象的な楽曲だ。この2曲を聴けば、『HOME, BEFORE AND AFTER』が、これまでのレジーナの作品の中で最も実験的で刺激的なアルバムとなっていることが分かるだろう。
4月にはニューヨーク・シティの歴史的会場、カーネギー・ホールでライヴを行ったレジーナだが、ニュー・アルバムの発売後は全米各地を回るツアーも行う予定だという。様々な声音と多様なスタイルで独自のサウンドスケープとストーリーを作り上げている彼女の新たな物語が今始まる。
発売・販売元 提供資料(2022/05/20)
セイント・ヴィンセント他を手掛けたプロデューサー、ジョン・コングルトンと組んだ8枚目のアルバム。もともとピアノの弾き語りを身上としているシンガー・ソングライターだから、前作同様、オーケストラルなポップ・サウンドとの相性は抜群だ。NYのアンタイ・フォーク・シーンを出自に持つエキセントリックな魅力も今は昔。穏やかな表現の中に美しいメロディーを紡ぎ出す才能がきらめいている。
bounce (C)山口智男
タワーレコード(vol.464(2022年7月25日発行号)掲載)