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| フォーマット | 書籍 |
| 発売日 | 2021年11月09日 |
| 国内/輸入 | 国内 |
| 出版社 | 南江堂 |
| 構成数 | 1 |
| パッケージ仕様 | - |
| SKU | 9784524248995 |
| ページ数 | 296 |
| 判型 | B5 |
構成数 : 1枚
【序文】
消化管病変の診断におけるゴールドスタンダードは内視鏡等で採取された検体の病理診断であるが,時に生検診断においては検体量や採取部位の問題から診断が困難な場合も経験される.また最近では画像強調を併用した拡大観察など,内視鏡による観察法の進歩により,病理診断に近い内視鏡診断が可能となっている.
しかしながら,そのような最新の内視鏡機器を用いても,すべての内視鏡医が正しく内視鏡診断ができるとは限らない.特に内視鏡の熟練医と初学医では,同じ病変を観察しても診断が異なることはまれではない.
熟練医は内視鏡で病変を観察しながら鑑別疾患を想定し,その疾患に特徴的な所見をとらえた撮影を行うのに対し,初学医はそのような鑑別疾患を想定していない撮影となり,検査後に別の内視鏡医がその写真を見ても診断が困難な場合がある.
近年は内視鏡に限らずさまざまな画像診断や検査機器の進歩により,医師が身体所見をもとに疾患を診断する機会は以前より減っている印象がある.しかしながら,身体所見が適切に判断されれば,過剰な検査を行わず正しい診断を下すことができるため,医療機器が発達した昨今においても,正しく身体所見をとることは医学教育において基本的診療能力と位置づけられている.それと同様に,内視鏡医の教育においても内視鏡所見からの鑑別診断の可否は内視鏡医の基本的診療能力として必須である.
熟練医と初学医の診断能の差は,内視鏡の操作技術だけでなく,基本的診療能力として,リアルタイムで内視鏡所見から鑑別疾患を推定する診断の「アルゴリズム」が身についているかどうかが影響している.熟練医は単に病変を撮影するだけでなく,病変ごとの特徴,たとえば隆起性病変の立ち上がりの形態や表面の性状などの局所的な所見や,そのような特徴をとらえるために正面だけでなく側面から撮影したり,送気量を変えて病変の形態の変化を観察するなど,診断の「アルゴリズム」を考慮しながら内視鏡診断を行い,さらに必要時に適切な部位から病理組織を採取している.
近年,artificial intelligence(AI:人工知能)を用いた内視鏡診断が発達し,病変の発見だけでなく,質的な診断にも応用されつつある.これにより近い将来には内視鏡医は疾患の診断ができなくても,AI の支援により鑑別疾患も含めて適切な診断が可能になることが期待される.しかしながら,AI の診断支援は,内視鏡医が病変を適切に動画や静止画で撮影することが必須であり,もし撮影の質が悪ければ,AI であっても正確な診断は不可能と思われる.そのため,初学医は内視鏡医の基本的診療能力に相当する内視鏡所見をもとにした診断の「アルゴリズム」を全消化管の疾患に対して習得すべきであり,それが本書の目的である.
この1 冊を通読することで,咽喉頭,食道,胃,十二指腸,大腸を網羅し,一般的な上部・下部内視鏡検査で遭遇しうる疾患の内視鏡所見の特徴とその鑑別を含めた診断の「アルゴリズム」が身につくことを期待している.
最近ではさまざまな診療ガイドラインにおいて診断や治療の「アルゴリズム」が作成されており,通常は論文などのエビデンスをもとに「アルゴリズム」が決定されている.本書の内視鏡所見による診断の「アルゴリズム」は,それぞれがエビデンス,...
消化管疾患の検査・診断に必須なモダリティである消化管内視鏡を用いた,存在診断・質的診断・範囲診断を確実に行うためのトレーニングを紙上で再現.内視鏡医が白色光下における肉眼的所見を手掛かりに診断を行う過程をアルゴリズムにして提示.所見ごとの代表的な疾患を取り上げ,鑑別に必要な知識を整理した.これから内視鏡検査・診断に携わろうとしている研修医や専修医の診断能力を高めるのに最適な一冊.
【書評】
消化管疾患の診断学は,X線診断の時代から内視鏡診断の時代になった.内視鏡診断は,ファイバースコープの時代から電子スコープ,そしてハイビジョンの時代,さらに今後はAIの時代になることが予想される.観察方法は白色光観察,色素観察,narrow band imaging(NBI)に代表される画像強調観察(IEE),さらに拡大観察までさまざまである.消化器内視鏡医としては,病変の発見,鑑別診断においてどの方法を用いることが最も有用であるかを知っておくことが重要である.
このたび,山本頼正先生,福澤誠克先生,菊池大輔先生,野中康一先生,小野敏嗣先生の共編で『診断力UP!アルゴリズムで読み解く消化管内視鏡』が発刊された.消化管内視鏡診断は,内視鏡所見の微妙なニュアンスを文字や言葉だけで伝えることは難しい.本書は多くの内視鏡写真とイラストを適時に挿入することで,そんなギャップを埋めている.本書を開いていただければおわかりになると思うが,一つひとつ文字を追わなくても,大事なポイントが理解できるように工夫されている.イラストや写真をみるだけで,スーッと頭に入るヒントを得ることができる一冊である.さらに各臓器別に総論の部分で解剖的な基礎知識,観察時の工夫,各学会のガイドラインにも触れ,その後に隆起性病変と平坦または陥凹性病変に分類したうえで,各々に鑑別診断のポイントとアルゴリズムを紹介している.コンパクトながら咽頭から大腸まで必要なすべてが盛り込まれていることは素晴らしい.この一貫したスタイルで各章が有機的に成り立っている.初心者はもちろん,エキスパートな内視鏡医にも参考になる内容と思われる.
以前は,食道・胃・大腸の観察であったが,最近は咽頭および十二指腸の観察も内視鏡医に要求される.咽頭では,われわれ内視鏡医が苦手な解剖をわかりやすく文字を入れた内視鏡写真を提示し,診断に関しては慣れ親しんでいる食道との違いを中心にわかりやすく解説している.さらに十二指腸では,内視鏡治療の適応となる腺腫・癌ばかりでなく,これまで経験したことがない悪性リンパ腫,神経内分泌腫瘍(NET),消化管間質腫瘍(GIST),転移性腫瘍まで提示されるとともにアルゴリズムによる診断もある.
意欲的な内視鏡医が,本書を購読いただき消化管内視鏡診断を習熟して,世界中で活躍することを願っている.
臨床雑誌内科130巻1号(2022年7月号)より転載
評者●東京医科大学消化器内視鏡学 主任教授 河合 隆

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