現代ジャズ・ピアノ界の重鎮、ブラッド・メルドー待望の新作完成!
プログレッシヴ・ロックから受けた音楽的インスピレーションと深い思索から生まれた『JACOB'S LADDER』発売。ジャズというフィールドに収まりきらない彼の音楽的探究心が新たな領域を切り拓く。
新世紀を代表するジャズ・ピアニスト"として、ジャンルを越えて、多くのアーティスト、ミュージシャンからも賞賛を浴びる鬼才ブラッド・メルドー。
昨年グラミー賞を受賞したこともあるオルフェウス室内管弦楽団とのコラボレーション作品『VARIATIONS ON A MELANCHOLY THEME』をリリースした彼が早くも新たなるアルバムを完成させた。
メランコリーを主題にジャズとクラシックを融合させた意欲作に続く最新作『JACOB'S LADDER』。本作のインスピレーションとなっているのは、彼をマイルス・デイヴィスやウェザー・リポートらをはじめとするジャズ/フュージョンの世界へと導いたプログレッシヴ・ロック、そして音楽を通して神を探求し、聖句について熟考すること。旧約聖書に登場する天国へと通じる梯子を意味するタイトルからもアルバムが持つテーマを伺うことが出来るだろう。
ジャズを見出す前、子供時代のメルドーにとっての音楽は、彼が当時読んでいたC.S.ルイスやマデレイン・レングルなどのSFやファンタジー作品の世界観にリンクしていたプログレッシヴ・ロックだったという。やがてプログレはマイルス・デイヴィスやウェザー・リポート、マハヴィシュヌ・オーケストラなどのフュージョンへの門戸となり、そこから彼はジャズの世界を探求するようになった。メルドーにとってジャズやプログレは、彼がそれまで知っていたロックよりも幅広い表現領域と大きな音楽的野心を持ったように感じられたのであった。
「ラッシュやジェントル・ジャイアント、エマーソン、レイク&パーマーらによるプログレは、ジャンルがもつコンセプト性、コンセプト的な部分、そして感情的な部分の幅を示唆している。彼らをはじめとする(プログレ)バンドは、新しいグループに影響を与え、このアルバムにも含まれているだけでなく、"Herr und Knecht"のスクリーミング・ヴォーカルのインスピレーションとなっているペリフェリーのようなハードロックやマス・メタルの世界にも息づいている。直接的なアプローチのトリビュートにならないように心がけ、曲によっては一部を引用したり、テーマを再構築した」
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発売・販売元 提供資料(2022/01/28)
『JACOB'S LADDER』には、同じノンサッチのレーベル・メイトでもあるパンチ・ブラザースのクリス・シーリーをはじめ、セシル・マクロリン・サルヴァント、マーク・ジュリアナ、ベッカ・スティーヴンス、ジョエル・フラームなどが参加している。またアルバム収録曲にはラッシュの「トム・ソーヤー」を彼流に解釈したヴァージョンも収録されている。アルバムの中でメルドーは、スタインウェイ・ピアノの他、ムーグ・シンセサイザーやメロトロン、ハモンド・オルガン、グロッケンシュピール、KORG MS-20シンセサイザーなどを駆使している。
ジャズというフィールドだけにとどまらず、これまでもライヴでしばしばロック・ナンバーの実験的カヴァーを取り入れたり、クラシックのアンサンブルとのコラボレーションを披露したり、またジャズ・ピアノだけでなくフェンダー・ローズやシンセサイザーなどを駆使したりと、その音楽的探究心で次々と新たな領域を切り拓いているブラッド・メルドー。自らの思索と思想、そしてプログレッシヴ・ロックから導かれた音楽的インスピレーションを形にした作品『JACOB'S LADDER』がここに生まれた。
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発売・販売元 提供資料(2022/01/28)
Brad Mehldau pushes far beyond the acoustic jazz he is known for on 2022s prog rock-inspired Jacobs Ladder. Even with his past forays into classical and exploratory jazz, the pianists choice to dip into the kinetic 70s and 80s rock of bands like Rush (he reworks several of their songs here) is an unexpected and eyebrow-raising move. That said, Mehldau has explored pop/rock songs in the past, famously applying his deeply introspective and harmonically nuanced style to tracks by Radiohead, Nirvana, and other iconic bands. While Jacobs Ladder continues this iconoclastic trajectory, it is much more than an intriguing covers album, as Mehldau weaves together several finely curated cover songs with his own ambitious compositions, including two classical-influenced three-part suites. Theres also a deeply philosophical bent to the record thats centered around Mehldaus feelings about God and spirituality. Along the way, he showcases a handful of equally boundary-pushing performers including vocalist Becca Stevens, saxophonist Joel Frahm, and singer/mandolinist Chris Thile, the latter of whom joins Mehldau for a particularly faithful rendition of Rushs "Tom Sawyer." Though piano remains Mehldaus primary instrument of choice here, he also plays a variety of analog synths, including Moogs, Korgs, and other sundry electric instruments. Of his original songs on the album, "Herr und Knecht" is perhaps the most prog-sounding, built around a heavy bass-and-drum groove in an odd time signature that Mehldau accents with fuzzy, laser-tone synths. More atmospheric is "Vou correndo te encontrar/Racecar," a melodic, Brazilian-inflected reworking of Peripherys "Racecar" that magically straddles the line between the languid 70s work of Caetano Veloso and the shimmering style of Yes. ~ Matt Collar
Rovi
「プログレッシヴ・ロックから受けた音楽的インスピレーション」を形にしたというアルバム。メルドーとプログレと言えば、マーク・ジュリアナとのデュオによる2014年作『Mehliana: Taming the Dragon』で聴かせたエレクトリックでプログレッシヴなサウンドが思い浮かぶ。歪んだサウンドやヘヴィーなビートだったり、プログレではお馴染みのムーグ・シンセサイザーやメロトロンを駆使したサウンド面でのアプローチでツボを抑えつつも、様々な音のテクスチャーで構築された緻密な音世界は、数多あるプログレ・ジャズ的なものとは一線を画す仕上がりだ。
intoxicate (C)栗原隆行
タワーレコード(vol.157(2022年4月20日発行号)掲載)