一度聴いたら忘れられない魔術的な魅力をもつ音色
フランスの気鋭ヴァイオリン奏者ド・スワルテ バロック三大ヴァイオリン巨匠の協奏曲を弾く!
18世紀前半のヴァイオリン作品の探求を続けるド・スワルテ。前作のHAF 8905292では、クリスティ(チェンバロ)と共演して、ルクレールとスナイエに焦点をあてたプログラムで名演を披露。今回は、「ヴァイオリン協奏曲の父」ヴィヴァルディ、そしてその同時代を生きたルクレールとロカテッリに焦点をあてたプログラムで登場。それぞれが卓越した奏者だっただけに、その作品はかなりの技量が求められます。一度聴いたら忘れられないような魔術的な魅力をもつスワルテの音色、そして「レ・ゾンブル」との息の通ったアンサンブルも聴きものです。
テオティム・ラングロワ・ド・スワルテ(ヴァイオリン)
17世紀から現代までをレパートリーとするが、とりわけ18世紀前半の作品の探求を続けている。ソリストおよび室内楽奏者として、世界的なホールで演奏している。4歳でヴァイオリンをはじめ、9歳でバロック・ヴァイオリンに出会う。パリのエコール・ノルマル音楽院でドゥヴィ・エルリ、そしてイゴール・ヴォルシヌらに師事。
2014年パリ国立高等音楽院に入学、室内楽なども研鑽を積む。2014年、トリオ・グエルマントを結成。2015年よりレザール・フロリサンのメンバーを務めるほか、ソロでも活躍をしている。チェンバロ奏者ジュスタン・テイラーとアンサンブル"all Consort"を結成している。2021年夏、クリスティ(チェンバロ)との共演による1枚をリリースしている(HAF 8905292)。
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料(2022/01/14)
It is mostly in Italy that the vigorous, high-powered way of playing Vivaldi has gained ground, but Theotime Langlois de Swarte in France is making major strides forward. With this set of concertos by Vivaldi, Leclair, and Locatelli, he is coming off his anointing-by-collaboration on a duet album with the giant of French Baroque music, William Christie, and he emerges with a powerfully individual style. Langlois de Swartes playing inhabits the public, violin-virtuoso realm from which this music emerged. He offers improvised or quasi-improvised preludes, stirs up excitement by varying the tempo, and cultivates a brilliant tone on his 1665 Stainer violin and Tourte bow. His accompanying ensemble, Les Ombres, has a gutsy sound (literally and figuratively) with 12 strings and a large continuo. It has a couple of different conductors, but it is Langlois de Swarte who is clearly running the show. His program is innovative, with lesser-heard works (even the Vivaldi), and integrated well, with the works by Locatelli and Leclair clearly influenced by Vivaldi and taking off in new directions from the strands of the incipient Classical style that began to appear in his works. The booming Metz Arsenal sound from Harmonia Mundi has an undeniably visceral appeal, but the music wouldnt have been hurt if it had been toned down a bit. Still, quite an exciting late Baroque release.
Rovi
温和や寛ぎといった個性が仇になるのか、宮廷音楽家の節度を感じさせる演奏を探して、なかなか見つからない時期が続いた。
コロナ禍のビザ発給待ち、息子とリヨン帯同を願っていた時、発売後にすぐに売切、作曲家と同じ言語圏の仏人演奏家で聴くのは諦め、既存の録音を購入(Naxos8570888、8570889、8572867、Chan0551、0589)し、リヨンへ共に渡航した。
聴いていて、現代演奏者よりも当時の作曲家の方が演奏技術が優れていたと感じる時がある。それが、ヴィヴァルディとルクレ―ルだった。もたもたと聴こえる部分があるのが不思議で、もしかすると作曲家本人の方が超絶技巧者だったのではと思ったのだ。
リヨンから帰国3年後、ド・スワルテ氏の演奏をCDで聴き、改めてルクレ―ル作品の美質が心身に響く。Tr.3/Op.7-5 第2楽章、リヨンの穏やかで開放的な空気感を思い出す。予感と期待に溢れた温雅な甘美を連れてくる。
日本語解説と日本語訳は、簡潔でも梗概以上の奥行きある知識を訳注と共に提供。今春から輸入販売元が別の会社に移ったが、今後とも、日本語訳と訳者解説を是非付けて欲しい。読後の理解と展開が遥かに違ってくる。
“ド・スワルテは、フレ―ズ単位どころか、一音一音にもメッサ・ディ・ヴォ―チェのニュアンスを施しゆく丁寧なアプローチ。”(寺西 肇、ブックレット 巻頭 訳者解説より)
他の演奏家も解釈により様々な技巧を施していると思うが、門外漢の私は教えてもらわないと、このような感受はできなかった思う。叙情性の現出や活写はこのような演奏家の勤勉にもある。
オリヴィエ・フ―レ氏(音楽学者・舞踊家、多分 イタリア・アントニオ・ヴィヴァルディ協会(ヴェネチア)の一員)による解説には、トリノのソミス先生とヴェネチアのヴィヴァルディ親子の厚誼と関係、ヴィヴァルディとロカテッリの出会い、ソミス門下生の仏人ルクレ―ルの熟達の非凡な速さとロカテッリとの出会い等が記載。三者の個性と時代模様が織りなされた作品を、伊仏の音楽関係から聴くアルバム。何回も読み直して、理解を更に進め深めて行きたい。
ジャン=マリ・ルクレ―ルJean Marie Leclaireの祥月命日(1764年10月22日)に。