圓山町 怪談倶楽部 供物の約束

【怪談其の一】牛抱せん夏『とある夫婦』
知り合いの池田さんは、「祓い屋」でもお寺の住職に弟子入りして霊媒師となった。その池田さんが、霊能力者の浅井さんから住職に御祓いの依頼に同行した体験を語る。ある夫婦が子供を授かる呪術を試した一軒家を訪れると、家じゅうに赤ちゃんの頭大の穴があけられ夥しい数の祠が祭られていた。穴の淵に沿ってカッターの刃が並べられていて……。

【怪談其の二】吉田悠軌『変顔』
マリさん(仮名)は、小学校、中学校の親友であったナオコさんのお通夜に向かう。社会人となっていたマリさんは、美人で自由奔放に生きるナオコさんとは疎遠となっていた。最後のお別れで棺の中の顔を見ると、苦しみと怒りと苦悶に満ちた形相であった。それから一週間後、小さなアパートに一人暮らしのマリさんは、本棚からナオコの写真を見つける。それから悪夢のような怪異がマリさんを襲う……。

【怪談其の三】中山市朗『大阿闍梨』
脚本家、映画監督の高橋洋氏より、中山市朗氏に譲られた怪談。千葉県の中学校で、ある年の春から音楽室に幽霊が出るという噂がたつ。何人もの教師が、赤いジャージの男の子の霊を目撃する。その男の子の霊は、二年前に近くの小学校のプールで溺死した子供ではないか? その学年が入学したと同時に姿を現すようになったのではないか? 学校は、比叡山で千日修業をした高僧の大阿闍梨に来てもらい読経とお札を貼ってもらうのだが……。

【怪談其の四】桜井館長『心霊写真と動画』
・心霊動画
マンションのドアが、誰も触れていないのにバタバタと開け閉めされる。女性の霊の写真を撮った男性が、ツイキャスで男性の友人に説明している音声に女性の笑い声。
・心霊写真
花火の写真に映り込む巨大な顔。お店の開店祝いの集合写真に、いる筈のない人の巨大な顔。インターフォーンのモニターに、映るはずの無い人影の写真。身体に血で描いたような紋様や文字が浮かび上がる聖痕写真など。

【怪談其の五】夜馬裕『供物の約束』
約束を守らせるというものも、一つの呪いの種類ではないか……。トモミさん、三十代前半の女性で、地味な性格が災いして職場で孤立していた。軽い気持ちでマッチングサイトに登録したところマサトさんという、素敵な男性と知り合った。代々続く旧家の土地神様を守っている家系の男性と、籍を入れないまま三か月間の花嫁体験生活を送ることになる。その生活を送るにあたって、三つの約束を守ってほしいと言うのだが……。