モーツァルトx3 (ダ・ポンテ&オペラ・セリアからのアリア集)

モーツァルトのオペラでの「3人」の登場人物の細かい性格設定を、巧みに歌い分けるという離れ業を披露。その表現力の幅広さに驚かされるこだわりのアルバム

1991年、フランス生まれのエルザ・ドライジグ。父親がフランス人、母親はデンマーク人で、二人とも音楽家であり、彼女も幼い頃から音楽に親しみ、2016年にはプラシド・ドミンゴが主催する「Operalia in 2016」で一位を獲得、サイモン・ラトルも認められ、今や世界的に注目を集めています。

このエルザ・ドライジグ3枚目のソロ・アルバムは、彼女をプロの歌手として導いた作曲家モーツァルトに敬意を表したものとなっています。この凝ったタイトル「モーツァルトx3」は、イタリアの詩人で台本作家であったロレンツォ・ダ・ポンテによる3つの画期的な傑作「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コジ・ファン・トゥッテ」からのアリアを中心として選曲されています。これらにはそれぞれ、女声のために書かれた3つの重要な役割が含まれており、その役割をこれらのアリアによって表されます。またモーツァルトが、バロック時代に確立されたオペラ・セリアの威厳のある形式化されたジャンルのために書いた「ルーチョ・シッラ」「イドメネオ」「皇帝ティートの慈悲」からの3つのアリアも収録されています。

ダ・ポンテの歌劇でドライジグは「3人」の登場人物には細かい性格設定がなされていますが、これらのアリアを巧みに歌い分けるという離れ業を披露。その表現力の幅広さに驚かされます。なんともこだわりたっぷりのアルバムです。
そして、オペラ・セリアからのアリアは、どちらかというとしっとりとした声を持つ彼女にふさわしい曲が選ばれていることにも注目です。例えばトラック18のチェチーリオのアリア「最愛のあなたよ」での諦観、そしてほのかな希望が感じられる歌のなんと情感豊かなこと。彼女の歌を通して、モーツァルトの天才性を存分に堪能するとともに、さまざまな登場人物たちが目の前に現れるかのような迫真に満ちたアルバムです。

エルザ・ドライジグは、2020年のザルツブルク音楽祭での「コジ・ファン・トゥッテ」(エラートよりDVDで発売中:9029.505032)でフィオルディリージ役を歌っており、「真珠のようなトップノートと堅実なテクニック」(グラモフォン誌)を賞賛。2021年春のベルリン国立歌劇場での「フィガロの結婚」では伯爵夫人を歌い絶賛されています。

「最初はとてもクリアで自然に見えるモーツァルトの音楽は、深く深い秘密を隠しているようです。彼の音楽を聴き、彼のオペラの台本を読むと、私が成長するのに役立つニュアンスと微妙さを見つけることができます。自由、バランス感覚、想像力、思想とユーモアの自由への賛美歌…自由と誠実さはモーツァルトの音楽において同等の力をもっています」と、エルザ・ドライジグは語っています。
このアルバムでは、パリのオペラ・コミック座の次期音楽監督となるルイ・ラングレーの指揮と、バーゼル室内管弦楽団がバックを務めています。
ワーナーミュージック・ジャパン

The operatic aria recital is quite a conventional form, geared toward singers generally in the early parts of their careers who want to show their chops before delving into more distinctive projects. There are certainly chops galore here from soprano Elsa Dreisig, and the Mozart arias on display are, for the most part, standard repertory items. "Pupille amate" from Lucio Silla, K. 135, a power number written for a castrato, is perhaps the exception, but Dreisig captures its muscular, slightly old-fashioned quality to the hilt. Thats the key to Dreisigs considerable appeal here. Shes not quite a household-name opera star, and one might find individual recordings of any of these pieces that have more sheer technical dazzle, but few would be able to put them together as Dreisig has, with each piece carefully considered as to its style and its emotional content. Dreisig is emerging as one of the major singing actresses of the day, as a listen to her compelling reading of the much-recorded "Dove sono," from Le nozze di Figaro, K. 492, will attest. Then turn to "Voi che sapete," from the same opera; few singers would have been able to turn on that dime. The Mozart x 3 title refers to the fact that there are three excerpts each from three operas, Cosi fan tutte, K. 588, Le nozze di Figaro, and Don Giovanni, K. 527; there are also extras from La clemenza di tito, K. 621, as well as Lucio Silla and Idomeneo, K. 366. Louis Langree, leading the Kammerorchester Basel, does just what he needs to do here, which is provide unobtrusive support to a singer who is carving out an extremely distinctive profile.