計算し尽くされた構造の中で自由に息をし、躍動感に溢れる多彩なバッハを表現したい
音楽雑誌への連載を行うなど研究者・執筆者としても積極的な活動を繰り広げる福田ひかりが満を持して発表するゴルトベルク変奏曲。国立音大、東京学芸大院、東京芸大院を修了。修士論文のテーマにも取り上げた福田がバッハの研究に本格的に取り組み始めたのは学生時代。ヨーロッパ各地で資料を収集するだけでなく、トロントでグールドの足跡をも巡るなど徹底した研究ぶりを見せる彼女が一作目としてとりあげたゴルトベルク変奏曲。『自分の考えるバッハ像をもっとも自由に表現できる作品』と言う点が大きな魅力であると語る。録音で使用したピアノは「C. Bechstein Model D-282」。同社の楽器は長年福田が愛用する。調律を担当した加藤正人氏の提案により、調律は不等分律・ピッチc1=256Hzと設定された。『バリトン、バスの声部が朗々と聴こえ、ポリフォニーの響きを立体的に表現出来る』と言う。軽やかなバロックボウでの弦移動を連想させる分散和音、うごめく通奏低音、バッハの音世界を体現したかのような響きにも耳を傾けて頂きたい。
松尾采奈によるカバー・アートは福田の演奏からインスピレーションを得て書き下ろされた、色彩のイメージと「襞」。
仕様: ジュエルケース仕様 曲目解説付き
カバーアート: 松尾采奈
【福田ひかり】
1967年岡山県津山市生まれ。国立音楽大学器楽学科(ピアノ)卒業。東京学芸大学大学院、東京藝術大学大学院(音楽学)修了。ピアノを寺坂栄子、弘中馨子、小阪文産子、賀集裕子、音楽学を足立美比古、東川清一、角倉一朗の各氏に師事。1992年パリで開催されたダリウス・ミヨー生誕100年記念公演に出演。1998年の初リサイタル以来、一貫してJ.S.バッハの鍵盤作品を中心にプログラムを組んでいる。2005-2009年には「バッハ・ツィクルス」(全5回)、2010-2014年には「続バッハ・ツィクルス」(全4回)を開催、好評を博した。2011年第8回津山国際総合音楽祭に出演。その他、オーケストラとの共演やデュオ、ジョイントコンサート等に多数出演。また、ピティナ・ピアノセミナー「バッハ インヴェンション徹底講座」や「〈Zoomオンラインセミナー〉インヴェンションがもっと楽しくなる♪"まるでレッスンのような"インヴェンション徹底講座」など、「"難しい"というイメージが先行しがちなバロック音楽に親しみを感じ楽しく弾こう」というコンセプトで行っている指導者向けセミナーもコンサートともに好評である。近年は音律や古楽器の研究にも取り組み、2014年に開始した「古典調律シリーズ」やモダンピアノと古楽器の接点を探るレクチャーコンサートなど、古楽器の啓蒙活動も積極的に行っている。『ムジカノーヴァ』誌上で「バッハ《インヴェンション》が楽しくなるレッスン」を好評連載中。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)正会員。
ナクソス・ジャパン
発売・販売元 提供資料(2021/10/20)
音楽雑誌への連載を行うなど研究者・執筆者としても積極的な活動を繰り広げる福田ひかりが満を持して発表するゴルトベルク変奏曲。国立音大、東京学芸大院、東京芸大院を修了。修士論文のテーマにも取り上げた福田がバッハの研究に本格的に取り組み始めたのは学生時代。ヨーロッパ各地で資料を収集するだけでなく、トロントでグールドの足跡をも巡るなど徹底した研究ぶりを見せる彼女が一作目としてとりあげたゴルトベルク変奏曲。『自分の考えるバッハ像をもっとも自由に表現できる作品』と言う点が大きな魅力であると語る。録音で使用したピアノは"C. Bechstein Model D-282"。同社の楽器は長年福田が愛用する。調律を担当した加藤正人氏の提案により、調律は不等分律・ピッチc1=256Hzと設定された。『バリトン、バスの声部が朗々と聴こえ、ポリフォニーの響きを立体的に表現出来る』と言う。軽やかなバロックボウでの弦移動を連想させる分散和音、うごめく通奏低音、バッハの音世界を体現したかのような響きにも耳を傾けて頂きたい。松尾采奈によるカバー・アートは福田の演奏からインスピレーションを得て書き下ろされた、色彩のイメージと「襞」。 (C)RS
JMD(2021/10/16)
福田は岡山県津山市出身のピアニストで、東京藝術大学では音楽学の修士号を取得している。この時の修士論文のテーマがゴルドベルク変奏曲であった。1998年からJ.S.バッハの作品を自分のレパートリーの中心に据えて活動しており、ブックレット記載の紹介では「『"難しい"というイメージが先行しがちなバロック音楽に親しみを感じ楽しく弾こう』というコンセプト」で指導者向けのセミナーも行っているという。音律や古楽器の研究にも取り組んでいるそうで、現代のピアノと古楽器の接点を探る人材であればこそ、ベヒシュタインが全面的なバックアップをして録音したのだろう。これが福田の初レコーディングとなるが、活動歴はベテランの域である。こうして自身の研究を踏まえ、良い環境で初めての録音を行えたことは、本当に幸福なことではなかろうか。
演奏については、主題回帰でグレン・グールド流の逆アルペジオが顔を覗かせる程度で、特に奇を衒ったところはない。リピートは第13,15,25と主題回帰でのみ省いているようだ。しかし、何か特別なことをしている風ではないのに、音楽が生き生きと息づいている。往々にして、この曲を腕試しのように弾くピアニストは少なくないのだが、そうした腕試しの演奏とは毛並みが違う。J.S.バッハの居る健全で楽しい日常の一コマとしてこの演奏が録られているような、程よく脱力した自然な佇まいが心地よい。