異才・菊地裕介が挑む"ピアノの指揮"-。迫りくるピアノが幽世の風景を描き出す。 (C)RS
JMD(2021/10/15)
【菊地裕介】
東京生まれ。母の手ほどきののち桐朋小学校に入学、桐朋学園子供のための音楽教室にて皆川紀子、加藤伸佳に師事し、桐朋女子高等学校音楽科2年在学中に日本音楽コンクール第2位入賞。卒業と同時に渡仏し、ジャック・ルヴィエに師事。ローム ミュージック ファンデーションより助成を受け、パリ国立高等音楽院高等課程を経てピアノ研究科を修了したほか、歌曲伴奏、作曲書法の高等課程にてアンヌ・グラポット、ジャン=クロード・レイノー、ティエリー・エスケシュ、マルカンドレ・ダルバヴィらの指導を受け、パリ音楽院では合計5つの一等賞を受け修了。また文化庁新進芸術家海外留学制度在外研修員として、ハノーファー音楽大学にてアリエ・ヴァルディのもとで学び、ドイツ国家演奏家資格を取得。
マリア・カナルス国際、ポルト国際、プーランク国際コンクールで優勝、またジュネーブ国際、ベートーヴェン国際(ウィーン)など、世界的権威あるコンクールにて入賞する。欧州の多くの国々でリサイタルを開催、また各地のオーケストラと共演を重ねている。国内では東京交響楽団、東京都交響楽団、東京フィル、東京シティフィル、仙台フィル、大阪シンフォニカー、名古屋フィルなど、室内楽では清水和音、永野英樹とのピアノデュオ、オーボエのモーリス・ブルグ、フルートの瀬尾和紀との共演がいずれも好評を博したほか、「1000分のベートーヴェン(ピアノソロ曲全曲演奏会)」、「ドビュッシー/ピアノソロ曲全曲演奏会」などのリサイタル活動も意欲的に展開している。ベートーヴェン/ピアノソナタ全32曲、ラヴェル/ピアノソロ作品全集(オクタヴィア・レコードTRITON)など録音も多数リリース。
2007年に帰国後、東京藝術大学、桐朋学園大学、洗足学園音楽大学の非常勤講師、名古屋音楽大学客員准教授を歴任。秋吉台ミュージック・アカデミーをはじめとする各地のセミナー、マスタークラスの講師、及び数多くの重要なコンクールなどの審査員を務める。小池百合子都知事の招集による東京都政策企画局 東京未来ビジョン懇談会メンバー。現在は東京音楽大学専任講師、株式会社 演 代表取締役、CJM神宮の杜音楽院(東京都渋谷区)院長。
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ナクソス・ジャパン
発売・販売元 提供資料(2021/10/14)
異才・菊地裕介が挑む「ピアノの指揮」―迫りくるピアノが幽世の風景を描き出す
ベルリオーズの代表作「幻想交響曲」。"ある芸術家の人生における逸話"というタイトルが付されたこの作品は、自身の失恋体験を音楽に乗せて告白するというもの。各楽章にはタイトルがつけられており、彼の恋愛対象を示す旋律(イデー・フィクス idee fixe、固定観念、固定楽想)が至るところに姿を変えて現れます。ベルリオーズの持てる全ての管弦楽法の極意がつぎ込まれたこの作品、オーケストラの多彩な響きが極限まで用いられています。
この作品をピアノ1台で演奏できるように編曲(トランスクリプション)を施したのが、ベルリオーズの友人、当時のパリでピアニストとして人気を誇っていたフランツ・リストでした。「幻想交響曲」の初演を聴いたリストは、その規格外の大オーケストラでしか演奏できない「幻想交響曲」の衝撃を広く宣言するために、超絶的なピアノ独奏版を作ってみずから演奏し、作品の普及に努めたのです。
リストの編曲は、オーケストラの多彩な響きが余すことなく生かされており、この譜面を見たシューマンは「ピアノの音符からオーケストラの全ての楽器をイメージすることが出来る」と絶賛。ただし、演奏が困難であり、超絶技巧と音楽性を兼ね備えたピアニストでないと弾きこなすことは不可能な作品と言えるでしょう。
この菊地裕介の演奏は、ピアノが紡ぎ出す音のみで、幻想交響曲の持つ華やかさの中に潜む不気味さまでをも見事に表現しています。夢見るような第1部、華麗な第2部、寂寥と孤独の第3部、恐怖みなぎる第4部、狂乱の第5部…一連の流れの中から浮かび上がる恋人の姿(イデー・フィクス)は、オーケストラで聴くときよりも、聴き手の耳に鮮明な印象を与えることでしょう。ベルリオーズとリスト、そして菊地が創り上げた興奮の1時間をお楽しみください。
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ナクソス・ジャパン
発売・販売元 提供資料(2021/10/13)
2019年11月29日、東京文化会館小ホールで聴いた菊地裕介が弾くリスト編曲ピアノ独奏版《幻想交響曲》は衝撃的だった。特異な作品を一層特異に再創造した怪物を曲芸的にやらず、きめ細かく諸要素を解きほぐすアプローチが冴え、ベルリオーズとリストの"仕掛け"にベートーヴェンのエコーを感じるかと思えば、ワーグナーやドビュッシーへ繋がるものが浮かんできた。あれから約2年を経て、待ち望んだ同曲のセッション録音がリリース。タッチや音色の選択がより掘り下げられ、心揺さぶられる。リストの《「イデー・フィクス」~ベルリオーズの主題によるアンダンテ・アモローゾ》 をカップリング。
intoxicate (C)中川直
タワーレコード(vol.155(2021年12月10日発行号)掲載)