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月夜の森の梟

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フォーマット 書籍
発売日 2021年11月05日
国内/輸入 国内
出版社朝日新聞出版
構成数 1
パッケージ仕様 -
SKU 9784022518002
判型 四六

構成数 : 1枚

  1. 1.[書籍]

「年をとったおまえを見たかった。見られないとわかると残念だな」(「哀しみがたまる場所」)

作家夫婦は病と死に向きあい、どのように過ごしたのか。残された著者は過去の記憶の不意うちに苦しみ、その後を生き抜く。心の底から生きることを励ます喪失エッセイの傑作、52編。

●近年、稀にみる圧倒的共感を得た朝日新聞連載の書籍化

作品の情報

あらすじ
◯本文より
あと何日生きられるんだろう、と夫がふいに沈黙を破って言った。
「……もう手だてがなくなっちゃったな」
私は黙っていた。黙ったまま、目をふせて、湯気のたつカップラーメンをすすり続けた。
この人はもうじき死ぬんだ、もう助からないんだ、と思うと、気が狂いそうだった。
(「あの日のカップラーメン」)

余命を意識し始めた夫は、毎日、惜しむように外の風景を眺め、愛でていた。野鳥の鳴き声に耳をすませ、庭に咲く季節の山野草をスマートフォンのカメラで撮影し続けた。
彼は言った。こういうものとの別れが、一番つらい、と。
(「バーチャルな死、現実の死」)

たかがパンツのゴム一本、どうしてすぐにつけ替えてやれなかったのだろう、と思う。どれほど煩わしくても、どんな忙しい時でも、三十分もあればできたはずだった。
家族や伴侶を失った世界中の誰もが、様々な小さなことで、例外なく悔やんでいる。同様に私も悔やむ。
(「悔やむ」)

昨年の年明け、衰弱が始まった夫を前にした主治医から「残念ですが」と言われた。「桜の花の咲くころまで、でしょう」と。/以来、私は桜の花が嫌いになった。見るのが怖かった。(「桜の咲くころまで」)

元気だったころ、派手な喧嘩を繰り返した。別れよう、と本気で口にしたことは数知れない。でも別れなかった。たぶん、互いに別れられなかったのだ。
夫婦愛、相性の善し悪し、といったこととは無関係である。私たちは互いが互いの「かたわれ」だった。
(「かたわれ」)

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著者: 小池真理子

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