CASE1 日野聡
俺は彼女との関係をどうやってあいつに打ち明けるか迷っていた。
――あの噂は本当なのか
出版社に務める同期の四人組。カメラマンの俺と文芸部のあいつ、紅一点の彼女、そして人事部のもう一人。俺はあいつの気持ちをわかっているつもりだった。ずっと仲のいい、あいつと彼女……。でも、俺は彼女を好きになり、付き合うことになった。本当にこれでいいのか? これではまるで抜け駆けじゃないか……。

CASE2 小野大輔
何よりも本が好きな俺は、今夜の一冊を本棚から選ぶ。そこにLINEの受信音。彼が彼女と交際することになった報告と、あいつを気遣う内容だった。
――君のそういうところ、すごく良いなあ
俺が人を好きになる時が来るとしたら、それはたぶん眠れなくなるほど夢中になれる本と出会うことと同じ。まだそういう相手に出会えていない。だから、真正面から人と向き合って、人の気持ちも考えられる彼を羨ましく感じてしまう……。

CASE3 菅沼久義
彼らの交際の報告を受けて、俺は画面越しに祝福の声をあげた。どうやら彼は、俺が彼女のこと想っていると誤解していたようだ。
――好きだよ、すごく大好き。……でも、友達として
確かに、彼女とは入社以来、この間まで同じ部署だったこともあり、すごく仲が良い。人の目をまっすぐに見て、自分に正直に生きている彼女。明るくて仕事熱心で、よく笑う。だから好きだ。これで、ようやく区切りがつけられる……。