「純粋」という美に触れる──2019年8月、最後の草津ライヴ録音
「聞こえてくるのはショパンが見いだした美であり、遠山慶子が見いだした美である。(中略)遠山慶子のマズルカを聴いていて、初めて『純粋』という美に触れる思いがした。」梅津時比古(ブックレットより)
2021年3月、ピアニスト遠山慶子が87年の生涯を閉じました。1952年コルトーに認められ、パリ留学を経て開花した才能は、聴衆はもちろん、音楽家たちをも魅了し、深く愛され続けてきました。草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルには、第1回より指導者、演奏家として参加し、数多くの音楽家を導き、名演を遺してきました。最後の参加
となった2019年8月の草津ライヴ録音をここにお届けいたします。
遠山慶子(ピアノ)
東京に生まれる。幼少の頃より井上定吉に師事。アルフレッド・コルトー来日の際(1952年)に認められ同氏の招きにより渡仏、パリ・エコール・ノルマル高等音楽院修了。在学中3年間にわたりアルフレッド・コルトー氏のもとで研鑽を積む。1963年、フランス、パリでデビュー以来、主にヨーロッパ、アメリカで演奏活動を行っており、日本でもリサイタル、オーケストラとの協演などで活躍、特に室内楽の分野では高く評価されている。1978年に行ったリサイタルに対して日本ショパン協会賞を授与された。
その活動は国内外で多岐にわたり、巨匠カルロ・ゼッキ、シャンドール・ヴェーグをはじめとする名指揮者との共演、ロン・ティボー、ゲザ・アンダ等国際コンクールの審査員、また毎夏に開催される草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルでは第1回から40回まで講師、演奏家として参加した。録音の分野でもカメラータから多くのCDを発売。2009年には元ウィーン・フィルのコンサートマスター、ウェルナー・ヒンクとのデュオによる『モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ選集』(全5枚)の全曲録音が完結。同シリーズは各方面で絶賛された。
ヒンクとのモーツァルト・ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会第1回、第2回および選集CDにより2009年度第51回毎日芸術賞を受賞。ウィーン弦楽四重奏団とは30年以上にわたり共演を続けた。
2021年3月29日逝去。
カメラータ・トウキョウ
発売・販売元 提供資料(2021/08/11)
2021年3月29日に87年の生涯を閉じたピアニスト、遠山慶子さんの「遺作」と呼べるアルバムがリリース。「草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル」への最後の出演となった2019年8月のライヴ録音でショパンの初期と後期のマズルカから13曲を演奏している(遠山さんの師であるコルトーの校訂楽譜を使用)。しなやかで清澄な佇まいの行間に宿る陰影、品格ある情感描出が光り、短い時間軸の1曲1曲の持つ音楽世界の奥行き、豊かさを伝える。とりわけ作品17-4、ラストの作品68-4の美の深淵は聴き手を揺さぶる。生々しくも耳に優しい音質で締め括りのみ拍手を入れた編集とともに作り手の真心を感じる。
intoxicate (C)中川直
タワーレコード(vol.154(2021年10月10日発行号)掲載)