アメリカ南部のダーク・サイドを垣間見せながら、デルタ・ブルース、アフロ・パンク、カントリーやフォークを巧みに織り交ぜたサウンドと鋭いウィットに富んだ歌詞を繰り出す、シンガー・ソングライター、Adia Victoria(アディア・ヴィクトリア)。サザン・ゴシックの文脈で21世紀のブルースを奏でる彼女が紡ぐ物語の第2章――T Bone Burnettがエクゼクティヴ・プロデューサーを務める最新作『A SOUTHERN GOTHIC』完成。
アメリカ南部のダーク・サイドを垣間見せながら、デルタ・ブルース、アフロ・パンク、カントリーやフォークを巧みに織り交ぜたサウンドと鋭いウィットに富んだ歌詞を繰り出す、シンガー・ソングライター、Adia Victoria(アディア・ヴィクトリア)。 PitchforkやRolling Stone、NPRやAmerican Songwriterといった感度高めの米メディアから高い評価を受けている彼女が、約2年ぶりとなる通算3作目となるスタジオ・アルバムを完成させた。
待望の最新作『A SOUTHERN GOTHIC』。本作にはT Bone Burn Burnettがエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、Jason IsbellやMargo Price、Matt Berningerらがゲスト・アーティストとして参加している。タイトルが表すようにこのニュー・アルバムでAdiaは、アメリカ南部が抱える対立や厄介な過去の影を辿る旅を続けている。アルバムの中には歴史のモンタージュや現代的な予言、光と影、愛と憎しみが同居しており、これらは多くの人々、特に黒人女性が持つアメリカ南部との関係を音楽的に具現化しているという。(1/2)
発売・販売元 提供資料(2021/08/12)
アルバムのソングライティングの過程で彼女はAlan Lomaxの古いフィールド・レコーディングを聴いていたが、その音が彼女の新たな音楽の鼓動となり、そこにクリエイティヴ・パートナーであるMason Hickmanと一緒に他のパートを重ねていった。そしてMasonとともに『A SOUTHERN GOTHIC』のソングライティングとプロデュースを手掛けたことは、アルバムを通して彼女が語ろうとした物語と同じぐらい重要な意味を持っていると言えるだろう。アルバムのレコーディングは、2019年から2020年初頭にかけてフランスのパリで始まった。そのパリ滞在中、Adiaは自宅のある故郷アメリカにいるときは感じることがなかった故郷に対するある種の明確さを見出すことができた。このアルバムの哲学は"必要は発明の母"だと彼女は語る。「それはまた"余分なものが無い時、すべてが取り除かれた時、あなたは残されたもので何をするのか"ということでもあるの。母親の家の庭を歩いてどんなアートができるのかってね」 新型コロナウイルスの感染拡大により、ミュージシャンやプロデューサー、スタジオへアクセスすることが出来なくなり、余分なものもなどない状況で、AdiaとMasonはまるでデュオ・グループのようにアルバム制作を二人きり続け、パンデミックを乗り越えようとした。Masonは独学でマンドリンとバンジョーを学び、Adiaは自らドラムとピアノのパートも担当した。そしてワクチン接種が始まり、アメリカ国内の行動制限が徐々に解除され、AdiaがT Bone Burnettとともにスタジオに入ることが出来るようになった後も、二人がレコーディングした音源は残ったのであった。 「このアルバムを、2020年の私の記録みたいなものにしたかった」Adiaは本作についてそう語る。「私自身が取り組まなければならなかったことを大事にしたかったし、正直でありたいと思った。それらを変えたり、きれいにしたりする必要はないと考えたの。率直に、ありのままを描いていると思ったから」
そうして完成したアルバムは、斬新な作品でありながら、これまでAdiaが作ってきた作品や南部の黒人の豊かなストーリーテリングの伝統に連なるプロジェクトとなった。実際エクゼクティヴ・プロデューサーのT Bone Burnettも「Aida VictoriaはMemphis Minnie とSojourner Truthの間をつなぐ弧をの上で歌っている」と語っている。それは彼女が「南部の黒人への頌歌であり、また"南部人(Southerner)"という言葉を使うときに私たちが意味するものから外れてしまうことが多々ある南部そのものへの頌歌である」と語る、アルバムからのブルージーな先行シングル「Magnolia Blues」から伝わってくるだろう。その曲の中でAdiaは、マグノリアの木陰で南部に帰る方法を見つけようとする南部の黒人女性の激動の冒険を語っているのだ。インディー・ロックの瑞々しさを湛えつつ、伝統を受け継ぎ、それに敬意を払いながらも新たな物語を繋げていくAdia Victoria。サザン・ゴシックの文脈で彼女は21世紀のブルースを奏でていく。(2/2)
発売・販売元 提供資料(2021/08/12)
前2作と比べてもダウンホーム感覚が格段に向上しているし、歌声にも異なる種類の痛切さが感じられる。デルタ・ブルースの深奥部へと果敢に踏み込んでいった彼女を鮮烈にとらえるこの新作。冒険の同行者がT ボーン・バーネットとは出来すぎな人選だが、かつてアラン・ロマックスが米国中を駆け巡って採集したフォークロアにも通じる血なまぐさく不吉なムードが最高で、たちどころに引き込まれてしまった。マジで劇烈。
bounce (C)桑原シロー
タワーレコード(vol.456(2021年11月25日発行号)掲載)