コミューナルな雰囲気が溢れるパパ・ウェンバの晩年作品
ワールド・ミュージック・ブーム時にその名を大きく轟かせたアフリカを代表する音楽家のひとりと言えばパパ・ウェンバ。今から5年前の2016年4月24日、アビジャンでの公演中に突然倒れそのまま亡くなるというショッキングな死は、アフリカ音楽ファンならずとも当時大きな衝撃を受けました。そんなパパ・ウェンバが晩年に残していた5曲入りのミニ・アルバム。
パパ・ウェンバ(1949-2016)は当時ベルギー領コンゴと呼ばれていたコンゴ民主共和国で生まれ、60年代の終わりごろから伝説のバンド"ザイコ・ランガ=ランガ"のオリジナル・メンバーとしてシーンに登場し、一躍国民的な人気者となりました。そして77年には自身のバンド"ヴィヴァ・ラ・ムジーカ"を立ちあげた彼は、当時"リンガラ・ポップ"と呼ばれていたコンゴのポップスを、ロック的にビルド・アップさせた"ルンバ・ロック"を作り出し、若い世代を中心に圧倒的な支持を得るまでになりました。その後80年代になるとユッスーやサリフらと共にアフリカ音楽を代表する音楽家のひとりとして世界に向けて大きく紹介されるようになり、さらに86年には初の来日公演も敢行。88年にはマルタン・メソニエによる『パパ・ウェンバ』が世界的なヒットを記録し、90年代にはピーター・ゲイブリエルのレーベル"リアル・ワールド"から3枚のアルバムをリリース、その後もフランスとコンゴを股に掛けた活躍を続けてゆきました。
しかし2000年代に入ると不法移民斡旋の罪で投獄されるなど、しばらくその活動は停滞しておりましたが、2010年頃から再び活動が活性化し、『我らが父ルンバ』『メートル・デコール』といった世界市場向け作品を数枚発表します。そして亡くなる1年前の2015年に、おそらくフランス移民やコンゴのローカル市場向けに制作されたのが本作『マイ・ヤ・ペンベ』でした。
本作は晩年の作品とはいえ、パワフルなサウンドと、トレブリーなヴォーカルは往年のパパ・ウェンバそのまま。当時60代半ばだった彼ですが、そんな年齢を全く感じさせない若々しさに満ちあふれている点に驚かされると共に、まさかこの1年後にステージ上で亡くなってしまうなど微塵も感じることはできません。また5曲入りのミニ・アルバムという触れ込みですが、実際には10分前後の長尺のトラックも多く、トータル41分というヴォリュームなので、フル・アルバムといっても差し支えありません。さらに付録のDVD(PAL方式/リージョン2)ではコンゴの若い女性たちがセクシーにダンスする様子が映し出されるなど、見所満載。なんともエンターテインメントな内容となっています。
録音や映像のクォリティーこそ世界レヴェルではありませんが、逆にそんな点も含めてコミューナルな雰囲気が伝わってくるのが本作の大きな魅力。コンゴ音楽ファンであれば絶対に楽しめる内容です。
発売・販売元 提供資料(2021/05/21)