20年間の潜伏期間を経て、2013年に突如発表された3rdアルバム『m b v』は、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインにとって最も実験的であると同時に、最もメロディックで即効性のある作品であり、改革に対する彼らの飽くなき意欲を証明したものだった。音楽とジャンルの概念をさらに押し広げた驚異的な作品として高く評価され、これまでにはなかったタイプの楽曲も収録されている。別世界の音のようであり、親しみやすくもあり、直感的に聴くこともできる本作は、それまで知られていたMBVの代名詞的サウンドが、驚くほど美しく変貌を遂げた新時代の傑作である。アルバムの最後に収録されている「Wonder 2」は、その証明であり、シールズの催眠的なギター・サウンドとドラムンベースが混ざり合ったサウンドは、多くを驚嘆させた。
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP (高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/解説書付/オリジナル1/4インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・帯付LPセット用Tシャツ:『Glider』EPのアートワークがモチーフとなったデザイン (ホワイト)
発売・販売元 提供資料(2021/03/31)
約20年の時を経て突如届けられたニュー・アルバムは、表題通りまさにマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン以外の何者でもない音が鳴っている。サウンドの傾向は大きく3つに分かれていて、冒頭の3曲が『Loveless』からの延長線上にあるもの。続く3曲では静謐さを強調し、そして最後の3曲ではドラムンベース調のビートも飛び出す攻撃的なナンバーといった具合だ。個人的には、物語でいう起承転結の〈承〉に当たるような2番目のパートが本作の肝だと思う。どこか物憂げでブルーな印象を受けるこの部分こそ、ケヴィンが長い時間のなかで達した境地なのではないかと。それは『Loveless』における孤独感とは異なる、諦念にも似た〈優しさ〉を感じさせる、すべてを包み込むようなノイズ・ミュージックだ。
bounce (C)佐藤一道
タワーレコード(vol.353(2013年3月25日発行号)掲載)