配信のみでリリースされたベッカ・スティーヴンスのデュオ・プロジェクト新作が日本のみフィジカル・リリース。アメリカン・ミュージックの古層に同化したベッカの感動的なヴォーカルが迫ってくる傑作。
『ベッカ・スティーヴンス&アタッカ・クァルテット』に続く2ケ月連続のベッカ新作は、旧友イーラン・メーラー(p)とのデュオ・アルバム。グレイト・アメリカン・ソングブック、フォーク、ブルースなどを取り上げた圧倒的かつ感動的な内容。ベッカの「歌」「声」がここまで全面に押し出された作品は珍しく、そこにビル・エヴァンスやポール・ブレイに影響を受けたイーランのピアノが美しく幻想的に調和する。
イーランはNY在のピアニスト/作曲家で、フランスのアナログ専門レーベルNewvelle Recordsの共同設立者(2016~)。同レーベルはブルックリンでも活動しており、今回はレーベル初の配信アルバム。本作録音は2019年の9月で当初リリース予定はなかったが、あまりの素晴らしさに配信だけでもとリリースが決まった。フィジカル盤としては今回日本のみの発売。
ベッカとイーランは、2009年にイーランのアルバム『The After Suite』で共演して以来の関係。このアルバムのアメリカ&ヨーロッパ・ツアーでの演奏、さらにイーランが住んでいたスイスでこのアルバムにも繋がる多くのレパートリーを二人で集中的にセッションし、そこでイーランがベッカのスタンダード解釈と声のレンジの広さに改めて驚嘆したことが本作アイデアの基となった。それから約10年経ち、Newvelle Recording Sessionsという企画がレーベル内で実現、その一環として二人の邂逅が実現した。
冒頭曲はギリアン・ウェルチがパートナーのデヴィッド・ローリングスと二人で作った名作『Time:The Revelator』(2001)より。アルバム最終曲は多くのミュージシャンが様々なスタイルで取り上げているブルースだが、これもギリアン・ウェルチの『Soul Journey』(2003)で歌っていたヴァージョンを参考にしている。これらに挟まれて、ガーシュイン、エリントン、ジミー・ヴァン・ヒューゼン、ピーター・デローズといったグレイト・アメリカン・ソングブックを形成する作曲家たちのレパートリーが並ぶ。
発売・販売元 提供資料(2021/02/16)
配信のみでリリースされたベッカ・スティーヴンスのデュオ・プロジェクト新作が日本のみフィジカル・リリース。アメリカン・ミュージックの古層に同化したベッカの感動的なヴォーカルが迫ってくる傑作。 (C)RS
JMD(2021/02/16)
常に音楽的進化を続けてきたベッカ・スティーヴンス。2020年のソロ作 『WONDERBLOOM』での、エレクトロニクスを駆使した実験的な音像には驚かされたが、NY在住のピアニスト、イーラン・メーラーとのデュオによる本作は、一転してアコースティックでスタンダードな内容。優しく寄り添うイーランのピアノがベッカの声の魅力をより際立たせ、圧倒的な説得力を放っている。当初、配信だけでリリースされていた本作が録音されたのは2019年9月だから、『WONDERBLOOM』とほぼ同時期ということ。全くベクトルの違う作品を同じ期間に制作していたというのもすごい。
intoxicate (C)栗原隆行
タワーレコード(vol.151(2021年4月20日発行号)掲載)