生誕150年のプルースト。
「失われた時を求めて」の原動力となった1907年コンサートを再現
2021年は文豪マルセル・プルーストの生誕150周年にあたります。それを記念してハルモニア・ムンディならではのアルバムが登場します。
プルーストは音楽の造詣が深く、レイナルド・アーンとのパートナー関係は有名ですが、若い頃からフォーレの音楽を熱愛していました。彼は「失われた時を求めて」の執筆を開始する6年前の1907年7月1日にリッツ・ホテルで「フィガロ」誌編集者ガストン・カルメットのためのディナーを催しました。その際フォーレも招き自作を演奏させる企画もしたとされます。しかし土壇場でキャンセルされたため、マルグリット・アッセルマンとモーリス・アヨ、エドゥアール・リスレルでプログラムを再考したのがこの演目でした。
演奏者の主張で当初企画していた趣旨から大きく変更されましたが、プルーストの音楽的嗜好は反映され、アーンの美しい作品を最初と最後に、フォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番をメインに据えています。このソナタは「失われた時を求めて」に登場する架空の「ヴァントゥイユのソナタ」のモデルとみなす研究家も多く、小説成立に大きな役割を果たしたことは間違いありません。
また「ヴァントゥイユのソナタ」が「トリスタンとイゾルデ」の強い影響を受けているという設定から、リスト編曲の「イゾルデの愛の死」も重要。プルーストは、「失われた時を求めて」中最も感動的な「祖母の死」の場面をこの編曲を聴いた印象で書いたとも言われ、この小説が音楽から多大なインスピレーションを得ていこと、1907年7月1日のコンサートが重要なカギとなっていることを証明してくれます。フランス文学関係者必聴のアルバムです。
演奏は17世紀作品で高い評価を受けるテオティム・ラングロワ・ド・スワルテ。シテ・ド・ラ・ミュージックの音楽博物館所蔵の1708年製作ストラディヴァリウスの銘記「ダヴィドフ」を使用。ピアノはハルモニア・ムンディいち押しのタンギ・ド・ヴィリアンクールが同じく音楽博物館所蔵の1891年製エラールを使用。ハーフ・サイズのグランドで、サロンで愛用されたモデルゆえ、まさに往時の響きを再現しています。
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料(2021/02/09)
The application of historical performance ideas to late Romantic music proceeds apace, and what could be more appropriate for the trend than the music in the circles surrounding Marcel Proust, whose writing is so full of musical references? Cellist Steven Isserlis and pianist Connie Shih issued a collection on the BIS label of cello music connected with Prousts salons, and now violinist Theotime Langlois de Swarte and pianist Tanguy de Williencourt offer this even more specific examination, grandly titled Proust, le concert retrouve (in English A Concert at the Time of Proust is used). As critic Nick Hammond points out (Paris Update, March 24, 2021), the musicians names themselves would not look out of place on the guest list of one of the salons described by Proust in his lengthy novel (The Remembrance of Things Past), and this release represents a fine act of historical imagination. The key is the instruments used: the 1708 Davidoff Stradivarius for de Swarte and an 1891 Erard grande for de Williencourt. They perfectly embody the intimate, artistically charged atmosphere these salons must have had, with the purring of the violin matching the rounded, quiet tone of the piano. The program does not exactly reproduce what was played at this salon, held at the Paris Ritz in July of 1907; the plan changed at the last minute due to Faures illness, and what is heard here was an original version of the program, which is heavy with Faure. The Violin Sonata No. 1 in A minor, Op. 13, fares very well here, much better than in larger, more impersonal readings. There are many delightful items among the small individual pieces, such as instrumental transcriptions of songs by Reynaldo Hahn and Couperins Les barricades mysterieuses, sounding for all the world like late 19th century music. The whole thing has a density of atmosphere that will keep listeners returning for multiple hearings.
Rovi
発売当初から注目していたが、知ってる曲ばかりだからと浅薄な気持ちで、買うのを見送っていた。スワルテ氏の別のアルバム『協奏曲で描くヴィヴァルディの生涯』(HMM 902373.74)のブックレットの演奏者自身による解説や企画・演奏意図が非常に良かったので、心残りだった本アルバムもようやく購入。
動画試聴とは音質が違い、微妙な陰影と心的時間軸や描写の違いなどがよく聴こえて豊穣な世界を現出、買って良かったと安堵。
私は、完読出来ていないがproustianだと思ってる。一般読者なので、読む気満々で、吉川訳全巻と鈴木道彦抄訳を始め、仏語原著や『Proust Essais』(nrf, 2022)を揃え、対訳と関係図書通読や映画2本を鑑賞、パリの博物館でプルスト着用の外套を展観など、完読への準備運動は余念がないが、準備運動ばかりしてると忸怩たる思いでいる。F .ク―プラン『クラヴサン奏法』は、頁数が少ないこともあるが、専門用語は未消化でも、一両日で完読したので、『失われた時を求めて』は中々読み進められないのが不思議でもある。
さて、本録音の感想は、曲の配置が美しく流麗であり、フォ―レの趣が際立ち、リスト編曲へ更なる興味を引出す。〈神秘の障壁〉のピアノ演奏は洒脱だが温もりがあり、人気曲〈クロリスに〉は追想または伏し目の心情吐露の色調で玄妙な解釈と演奏。
使用楽器の蔵する記憶が、演奏と共に部屋を満たすかのような感覚を覚える。
楽器解説は、パリ音楽博物館学芸員による。
巻頭には、パリ音楽博物館長M-P.マルタン女史の序文有り。
プル―ストとフォ―レの交誼の程がよくわかる解説は、(多分)ソルボンヌ・ヌ―ヴェル大学(パリ第3大学)教授C.Leblanc女史が執筆。
当然ながら、優れた企画と演奏のアルバム。