The Moon And Stars: Prescriptions For Dreamers

ボブ・ディランに賞賛された前作から4年ぶりの3作目。
過去にオバマ元米大統領やボブ・ディランも賞賛の声を寄せた、テネシー州出身の女性シンガーによる4年ぶりの3作目。ジャック・スプラッシュとの共同プロデュースとなった本作、アーシーなR&Bのプロダクションとドリーミーなタッチを取り入れたサウンドが、彼女の表情豊かな歌声と見事に一体となった、実に聴き応えある一枚。
(C)商品本部:加藤 知也

ヴァレリー・ジューンの4年ぶりの3rdアルバム『The Moon and Stars: Prescriptions For Dreamers』。ジャック・スプラッシュ(ケンドリック・ラマー、アリシア・キーズ、ジョン・レジェンド)とヴァレリー・ジューンが共同プロデュースしたこのアルバムは、土臭いR&Bのプロダクションとサイケデリアのタッチを取り入れた壮大で野心的な内容となっており、そのアストラルなフォーク・ポップのオーケストレーションの中で、二人はエレガントで果てしなく驚くようなサウンドに到達した。その中心にはジューンの魅力的なヴォーカルと伝染するような不思議な感覚で、ブルックリンとメンフィスを行き来するこのアーティストは、喜びに満ちた可能性へと向かう辛抱強い旅路を語る。

先行配信されたアルバムの1stシングル「Call Me A Fool」は、アルバムの素晴らしいプレビューとなっており、STAXの伝説的なシンガー、カーラ・トーマスをバック・ヴォーカルにフィーチャーしたメンフィス・ソウル。
L.A.のFresh Young MindsとマイアミのHit Factory Criteriaで本作を制作していたジューンは、アーティスティックなプロセスの中で子供のような冒険心を持つ彼女と同じ傾向を持つ理想的な協力者、Splashを見つけた。「今回のアルバムでは、これまで行ってきた"同じ一つの部屋でバンドで録音"というアプローチに、現代的な要素をどうやって取り入れられるか見てみたかったの」とジューンは言う。このアルバムに命を吹き込むにあたり、2人は、フェラ・クティのアフロビートからデヴィッド・ボウイのプロデューサーであるトニー・ヴィスコンティの壮大なストリングス・アレンジに至るまでの参考点を活用し、尊敬するミュージシャンたちの多彩なラインナップが自由奔放な実験に没頭した。
この新作について、ジューンは次のようにコメント。「このアルバムで、私がなぜ音楽を作りたいという夢を持っているのかがようやく明らかになりました。それは、賞を取りたいとか、誰かの愛を勝ち取りたいというこの世の理由ではなく、夢を見ることで私は探究心を持ち続け、世界と共有すべきものを学び続ける道を歩むことができるからです。私たちが子供の頃のように夢を見ることを許せば、私たちの中に持っている光に火をつけ、私たちが生きる方法についての魔法のようなものを持つことができるのです」
本作『The Moon and Stars: Prescriptions For Dreamers』は、2013年に発表したデビュー・アルバム『Pushin' Against A Stone』、そしてボブ・ディランに賞賛され、その年の年間ベスト・オブ・ザ・イヤーにも多々選ばれた2017年の『The Order of Time』に続く作品で、夢を見るのに十分なほど愚かな人々のための強力な触媒となる、心を揺さぶる、深い影響力を持つ作品だ。

On her previous record, The Order of Time, Valerie June created an ethereal space where her thoughts and philosophies mingled in a poetic tangle of earthy dream-folk and windblown soul. Based in Brooklyn but hailing from Memphis, Junes music rose out of a tapestry of American roots traditions that she has since elevated and, in the case of 2021s The Moon and Stars: Prescriptions for Dreamers, transcended. Ambling with guitar in hand down creative paths less taken, she and co-producer Jack Splash (Kendrick Lamar, Alicia Keys) have captured a rare gem of heartfelt expression and sweet liminality. Like a modern-day Astral Weeks, The Moon and Stars filters the familiar and organic through a celestial veil with June serving as medium between the spiritual and corporeal worlds. In the creak and lull of her entrancing vocals, she nimbly threads the spaces between joy, wonder, and longing on airy highlights like Stay, You and I, and Fallin. Even in the more substantive arrangements of songs like the brass-driven Stardust Scattering or the Carla Thomas-assisted soul romp Call Me a Fool, theres a gossamer elegance mixed with the heady thrill of experimentation. Almost conceptual in format, short interstitial tracks connect longer ones with trilling flutes, chimes, and ornate chamber-pop string sections woven throughout the LP. Despite its loose infatuation with late-60s psychedelia, occasional dalliances with modern electronic sounds, and myriad of other sonic touchstones, its essence remains timeless and pliable. Even better, Junes knack for textural ambience is always at the service of her lovingly crafted songwriting. A standout among her already impressive catalog, The Moon and Stars is utterly beguiling with a luster that only deepens with repeated spins. ~ Timothy Monger

ゴスペルやソウルを原点に、故郷テネシー州でルーツ音楽を体得し、モダンな感覚も取り入れてアメリカーナの先鋒となる才媛。4年ぶりに放つ3枚目では、彼女の素を引き出すことに徹したジャック・スプラッシュとの共同作業で弦を交えたエレガントかつサイケな音像を作り、素朴ながら自由奔放なヴォーカルを際立たせる。カーラ・トーマスを迎えた"Call Me A Fool"でメンフィス・ソウルのアーシーな部分に力強く踏み込むあたりも痛快だ。
bounce (C)林剛