モンティ・アレキサンダー、1982年未発表ライヴ作品
スウィンギー・スタンダード、カリビアン、カクテル・ラウンジ風バラードなどなど
名POPナンバー"ニューヨーク・シティ・セレナーデ"をオープニングにした洒脱な演奏!
今なお精力的な活動を続けるピアニストのモンティ・アレキサンダーだが、とりわけ1980年代初頭の勢いは並外れていた。元オスカー・ピーターソン・トリオのハーブ・エリス+レイ・ブラウンとの"トリプル・トリート"ではスタンダード・ナンバーを中心にスウィングにつぐスウィングで魅了し、いっぽうオセロ・モリノーのスティール・パンを加えた"アイヴォリー&スティール"ではポップでファンキーなカリブ風味のジャズを存分に展開。そして81年に収録された当アルバムは、"第3のユニット"というべき顔ぶれによる、スウィングありカリビアンありカクテル・ラウンジ風バラードありの音の万華鏡だ。
メンバーがまた、充実。ベースのポール・バーナーはレッド・ロドニー(チャーリー・パーカーと共演したトランペット奏者で、少年時代のクリス・ポッターも育成)のバンドで名をあげた逸材。81年という、アンプ付きウッド・ベースがベタベタ、ブヨブヨとはびこっていた時期に、木の質感たっぷりのサウンドで迫るのだから嬉しくなる。ドラムスのダフィー・ジャクソンは、40年代ウディ・ハーマン・オーケストラのベーシスト兼新人発掘係であったチャビー・ジャクソンの息子。カウント・ベイシーやライオネル・ハンプトンのオーケストラに参加経験のあるダイナミックな演奏家で、ここでもたたみかけるようなプレイでモンティを鼓舞する。ハンド・ドラムスのボビー・トーマスは無論、ジャコ・パストリアスやピーター・アースキンと共に最盛期のウェザー・リポートのリズム・セクションを担った名手だ。
この4人が気候の温暖でカリブ海にも近いフロリダ州に集まり、心底ジャズを愛する観客の前で思う存分プレイしたのがこの2枚組である。「オルフェのサンバ」「モンテビデオ」「レゲエ・レイター」など曲名を挙げていくだけでも、ステージの楽しさは十二分に伝わるはず。クリストファー・クロスの大ヒット曲「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」の洒脱にしてダンサブルなジャズ・ヴァージョンにも、聴いていて笑顔が止まらない。
発売・販売元 提供資料(2020/09/30)
数々の貴重な発掘音源を世に送り出してきたレゾナンスから、ピアニスト、モンティ・アレキサンダーの1982年未発表ライヴ音源。レコーディング・エンジニアはアレサ・フランクリン、ジェイムズ・ブラウン、エリック・クラプトンの録音も手掛けたレジェンドのマック・エメルマン。ジャコ・パストリアスやピーター・アースキンと共に最盛期のウェザー・リポートのリズムを支えたロバート・トーマスJr.(perc)などの名手たちと共に、スウィンギーなナンバーからラテン調のものまで、思わず踊りたくなるような快活な演奏で楽しませてくれる。音を楽しむことを改めて教えてくれる好盤だ。
intoxicate (C)栗原隆行
タワーレコード(vol.149(2020年12月10日発行号)掲載)