青い炎の様に静かにゆらめく情熱。実験と洗練の果てに望む5番目の季節。
欧米の最先端ビートシーンに降り立ったニューエイジ界のミューズによる、新世代UKジャズシーンとの邂逅。
NK Jemisinの『ブロークン・アース』三部作との出会いに触発され制作された今作は、大陸を引き裂くように劇的な失恋/喪失を根底に描き、欧州の音響/ビートシーンの新たな声としてドラスティックなデビューを果たした前作からより遠く、深く、静かな場所に根を下ろしている。
Theon Cross (Tuba), Nathaniel Cross (Trombone), Valentina Magaletti (Percussions)といった新世代UKジャズシーンの重要人物を招き、エディットカルチャー以降の感覚で鳴らされる演奏の熱がリアルタイムで肉薄し、 彼女の歌声に第六感的な崇高さと逞しさをもたらす。
Brigitte FontaineとScott Walkerが踏み入れた深淵の先に 果敢にも挑んでいくその聡明なエネルギーは、Art Ensemble of ChicagoやRoland Kirkの見た恍惚を再現し、人類が未だ知らない、新たな季節の始まりを告げる。
発売・販売元 提供資料(2020/09/07)
ラファウンダことヤスミン・デュボワのセカンド・アルバム。前作『Ancestor Boy』(2019年)はワープでの初EP『Tan』(2016年)と比べるとニューエイジ色が濃く、それはジョン・ハッセルの〈第四世界〉のスピリットを宿したものだった。つまり、グローバルな世界における各地の伝統的な音とテクノロジーの融合であり、彼女の前衛的なダンス・ミュージックと土着的な音楽を軸としたものだった。いま思えば、それは変化の序章だったのかもしれない。今作にはもはやダンス・ミュージックとしての機能はほとんどなく、あるのはダークで美しいシネマティックな世界。いままではベース・ミュージックの文脈で語られることが多かっただけに、彼女の引き出しの多さには脱帽せざるを得ない。記憶に残る〈第五の季節〉だ。
bounce (C)長谷川義和
タワーレコード(vol.445(2020年12月25日発行号)掲載)