Taste of Honey - A Tribute To Paul McCartney

ウルフ・ワケニウス・トリオによるポール・マッカートニーへのオマージュ
wings時代の楽曲や、キャリア初期に演奏していたゆかりの楽曲12曲
メンバーと、ACTオーナー/シギ・ロッホのセンスと音楽愛が形になった一作!

スウェーデンを代表し、10年に渡りオスカー・ピーターソンのグループのメンバーとして活動して世界的にも広く知られるギタリスト、ウルフ・ワケニウスのトリオによる、ポール・マッカートニーのトリビュート作品。

レーベルオーナーのシギ・ロッホがウルフ・ワケニウスからこの作品のアイデアを聞いた時、シギは、ビートルズのカバー演奏はすでにたくさんの演奏がなされていることから懐疑的だったとのこと。しかしながら、ウルフとベースのラース・ダニエルソンは、ジャズへの情熱を共有してきたのみならず、双方共に、ポール・マッカートニーに深い敬意を抱き、ウルフはこの作品制作を熱望。マグヌス・エストロムをドラマーに迎えてドリーム・チームともいえるトリオを結成し、実現に動き出した。

アーティスト自身の強い意志が元になってスタートを切った本作。選曲も非常に興味深い。
ウルフとラース・ダニエルソンが中心になって選ばれた曲にシギは、彼らのポール・マッカートニーのレパートリーへの深い理解を確かにしたとのこと。と同時に、1962年、ポール・マッカートニーの演奏を実際に何度も見ているシギは、wings時代の演奏も入れることを提案。また、その時代、彼らがオリジナルと共に、チャック・ベリーやバディ・ホリーを演奏し、コンサートのハイライトにはいつもボビー・スコットの"テイスト・オブ・ハニー"を演奏し、ロンドン、リバプールでのコンサートでは、ラストに"ベサメ・ムーチョ"を演奏していたことを目撃していたことを受けて、それらのナンバーもラインナップに加えることを提案。ミュージシャンのセンスと、ヒストリカル的な意味も織り込んだ、まさにこだわりの12曲が選択された。

作品は、前述の"テイスト・オブ・ハニー"をオープニングに、メランコリックな楽曲に端正な演奏を繰り広げるかと思うと、ケルト的なノスタルジーも織り込まれる場面あり、ロックスピリッツにあふれたWings時代のJetでは、パットメセニーあたりを彷彿させたりと、ジャズ・ミュージシャンとしての多彩なアレンジが、非常に興味深い。トリオというシンプルな編成で、底辺ではスウェディッシュのミュージシャン独自のクールさとメロディを基本としながら、楽曲が元々持つ世界を明暗/動静のコントラストやニュアンスも絶妙に描き、ポール・マッカートニーへの最高の敬意を見せる。またそうした中に2曲のオリジナルも。双方ともにラース・ダニエルソンのピアノとギターのデュオで、メランコリックな表現がカバー演奏と響きながら、作品に奥行きを加えている。

紛れもなく、スウェーデンを代表するアーティストとなった3人のリスペクトが形になった一作は、非常に興味深い。