ヨンシーが魅せる深淵なる陰影の音楽的朦朧体――。アイスランドが誇るポストロック・バンド、シガー・ロスのフロントマンが約10年ぶりにリリースするソロ・アルバム。英国の奇才プロデューサー、A.G. COOKを共同プロデューサーに、エリザベス・フレイザーやロビンをゲストに迎えた最新作『SHIVER』リリース。
アイスランドが誇るポストロック・バンド、Sigur Rosのフロントマン、Jonsi (ヨンシー)が、ソロ名義としては『Go』以来、実に10年ぶりとなる待望のセカンド・アルバム『SHIVER』をリリースする。
アルバムのプロデュースを手掛けるのは、ヨンシーとPC MUSICの創設者である英国の奇才プロデューサー、A.G. COOK。元々彼の作品や仕事にあこがれを抱いていたヨンシーは、ロンドン旅行中、実際A.G.COOKに会う機会を得るが、話しているうちに、完ぺきなコラボレーション相手になるのではないかと感じたという。「もう30年近くやっているからね」そうヨンシーは語る。「自分は飽きっぽい人間なんだ。常に面白いこと、エキサイティングなこと、新鮮なことをやりたいと思っている、だから新しいアルバムを作る時・・・今までとは違うアプローチをしたかった」
結果完成したアルバム『SHIVER』は、ポップスの構成を保ちながら、新たな音領域を切り開くような作品となった。例えば「Blackout」は、刻まれたホーンのサンプリングがサイレンのように響くサウンドの上を、幾重にも重ねられたヨンシーの甘美なヴォーカルが浮遊し、壮大な曲でありながらも、美しき混沌を見せている。またアルバムの幕開けを飾る「Exhale」は、シンセとピアノでこのコラボレーションのソフトな面を表している。(1/2)
発売・販売元 提供資料(2020/07/03)
そしてコクトー・ツインズのエリザベス・フレイザーをフィーチャーした「Cannibal」では、ヨンシーと彼女が、まるで二羽のハチドリのように透明感と浮遊感のあるヴォーカルを重ね合わせ、漂わせ、この世のものとは思えない幽玄な雰囲気を醸し出している。ちなみにヨンシー曰く、シガー・ロスははじめの頃、コクトー・ツインズと比較されることがよくあり、そのことが気に入らなかったという。「他人と比べられるのが嫌だった。でも2-3年前にコクトー・ツインズにハマったんだ。素晴らしかったよ。それからは、比較されていたのも理解できるようになった」
この他アルバムには同じ北欧出身のアーティスト、ロビンが「Salt Licorice」でフィーチャーされている。この曲の中で、ヨンシーと彼女は、"スカンジナビアならではの痛み"、ノスタルジア、年を重ねることや運転することの憂鬱さについて、歌い交わしている。 またアルバムに先だって先行リリースされた新曲「Swill」では、映像作家/フォトグラファーのBarnaby Roperがディレクションを、スウェーデンのヴィジュアル・アーティストPandagundaがアニメーションをそれぞれ担当しているというMusic Videoも併せて公開された。
人間としての経験の深奥さと、我々の自然世界との繋がりを測るような作品を目指して制作され、ヨンシーの有機的で朧げな表現と、A.G. Cookのアヴァンギャルドでシンセチックなサウンドとが拮抗するという仕上がりになっている『SHIVER』。二人の音的コントラストと奥深い感情が美しい陰影を作り出す――そんな繊細な芸術作品のようなアルバムだ。(2/2)
発売・販売元 提供資料(2020/07/03)
初ソロ作『Go』から10年、シガー・ロスのフロントマンが待望の2作目をついにリリースした。美しい歌声で幕を開け、序盤ではエリザベス・フレイザーも客演。AG・クックを共同プロデューサーに迎えて、中盤にはハドソン・モホークばりのアッパーなサウンドもあり、ロビンとのコラボ"Salt Licorice"でテンションは最高潮に。最後の2曲はエンディングに相応しい出来映えで、まるで映画のラストのようにアルバムを締め括っている。
bounce (C)長谷川義和
タワーレコード(vol.443(2020年10月25日発行号)掲載)