30年あまりのキャリアを持つリード奏者による秀逸なショーター・トリビュート作
ヴァンガード・オーケストラ、マリア・シュナイダー・オーケストラ、フレッド・ハーシュ・マイ・コマ・ドリームス、ミシェル・カミロ・バンドのホーン演奏
技とセンスを問うバンドでキャリアも積むコルカーと鉄壁のメンバーが創った力作
フィラデルフィアで育ち、ブルックリンを拠点とするリード奏者、アダム・コルカーの2年ぶりのリーダー作品。30年あまりのキャリアの中で、数々の大御所/話題のアーティストのバンドで活動。NYヴィレッジ・ヴァンガードのヴァンガード・オーケストラ、マリア・シュナイダー・オーケストラ、フレッド・ハーシュの"マイ・コマ・ドリームス"また、近年では、ミシェロ・カミロの超絶バンドのホーン・セクションにも名を連ね、アルバムにも参加している。
本作はそんなコルカーによるウェイン・ショーターの芸術へのオマージュ作品で、アルバムのタイトル『Lost』はショーターの代表的楽曲からとっている。最初のコンセプトとしては、ショーターの楽曲集を考えていたが、時を経て、自らが作曲したものや演奏したものもショーターからインスピレーションを受けて表現しているということに気づき、直接のショーター楽曲は2曲、ショーターゆかりの楽曲や、ショーターをイメージしたアレンジや、自らのオリジナルを織り交ぜ、7曲構成でまとめ上げている。
バンドはブルース・バース、ウゴナ・オケグオ、ビリー・ハートと、コルカーとは10年もの共演歴を持つバンド・メイトであり、アメリカの音楽シーンで確固とした活動を見せてきたメンバーたち。このレコーディングのために、メンバーはギグやリハも行って準備も整えて、2019年12月にレコーディングしたというが、驚くべきは、作品を通して幻想的で筆舌に尽くし難いウェイン・ショーターの芸術に迫り、ひとつの世界観を作り上げたことだ。
ウェイン・ショーターが参加した60年代のマイルス・デイビス・グループを彷彿とさせる、ギリギリの均衡感をもったテンションの高いハーモニーとフレージングがつくるスリリングなバンド・サウンド、モーダルかつ予測をいい意味で裏切る飛翔感、ふくよかでミステリアスな音色をたたえたテナーと、宙空に広がるようなソプラノ、繊細なアレンジを施したスタンダード・ナンバー"Darn that Dream"の美しさ・・・ここにはひとかたならないショーター音楽へのリスペクトが横溢する。
ウェイン・ショーターと実際に録音歴を持つビリー・ハートの存在はもちろん、バンドの核をつくるオケグオのベース、ハンコックを彷彿とさせるモーダルなフレーズをリリカルに聞かせるブルース・バース、メンバー全員の演奏、またアンサンブルが秀逸。力作です。
発売・販売元 提供資料(2020/06/26)