あのフィリップ・H・アンセルモ率いるエン・マイナーがアルバム・デビュー!クリーンなギター・サウンド+低音で雰囲気いっぱいに歌い上げるヴォーカルというスタイルは、フィリップが過去に聴かせたいかなるものとも違う新たな闇の世界。 (C)RS
JMD(2020/06/23)
あのフィリップ・H・アンセルモ率いるエン・マイナーがアルバム・デビュー!クリーンなギター・サウンド+低音で雰囲気いっぱいに歌い上げるヴォーカルというスタイルは、フィリップが過去に聴かせたいかなるものとも違う新たな闇の世界。
フィリップ・H・アンセルモ。ヘヴィメタル・ファンで、その名を知らぬものはいないであろう。90年代、一世を風靡したスーパースターであると同時に、当時グランジの台頭により瀕死状態にあったヘヴィメタルの救世主でもあったパンテラのフロントマンだ。ダウン、スーパージョイント・リチュアル、ネクロフェイジア。メタル、パンク問わずアンダーグラウンドな音楽にも非常に造詣が深い彼は、パンテラ在籍時から多くのプロジェクトに携わってきた。そんな中、現在大きな注目を集めているのがフィリップ・H・アンセルモ&ジ・イリーガルズだ。自身の名を冠していることからもわかる通り、基本 ヘヴィメタル・ファンでフィリップ・アンセルモの名を知らぬものはいないだろう。彼が関わってきたバンド、プロジェクトは数多い。パンテラについては言うまでもないが、他にもダウン、スーパージョイント、ネクロフェイジア、スコア、クライスト・インヴァージョンなどなど、その活躍のフィールドはデス・メタルやブラック・メタルまでと広範囲に及ぶ。今回アルバム・デビューを果たすエン・マイナーは、ヘヴィなギターが出てこないという一見異色にも思えるバンド。だが、ニューオーリンズという音楽文化の豊かな地域で生まれ育ったフィリップに、スタイルの制限など存在するはずもない。実際彼は、80年代終わりからボディ・アンド・ブラッドというアコースティック・プロジェクトをやってきた。その発展型がエン・マイナーなのである。
ドラムはダウン、クロウバー、アイヘイトゴッド等のジミー・バウアー。ギターはフィリップ・H・アンセルモ&ジ・イリーガルズのスティーヴン・テイラー。だが、エン・マイナーのスタイルは、それらのバンドとは一線を画すもの。あくまで主体となるのはクリーンなギターやアコギ、そしてチェロ。「アンチ・ポップ」、あるいは「キル・ザ・パーティ・ミュージック」。フィリップはエン・マイナーのスタイルをそう呼ぶ。音楽とは人々を楽しませ、明るい気分にするもののはず。だが、エン・マイナーがプレイするのは、そんなステレオタイプなイメージの対極にある音楽だ。ニック・ケイヴ、スワンズ、スミス、モリッシーといったアーティストからの影響を感じさせる、ひたすら暗い、ダークすぎる音楽。やはり一番の聞きどころはフィリップのヴォーカルであろう。雰囲気いっぱいの歌い上げは、彼が過去に聞かせたいかなるスタイルとも異なるもの。まさに「低音の魅力」という表現がピッタリだ。
また1つ新しい扉を開いたフィリップ・H・アンセルモ。彼のファンならば、エン・マイナーを聞き逃す手はない。日本盤には19年にリリースされた『オン・ザ・フロア』7inch EPを収録。
発売・販売元 提供資料(2020/06/18)
元パンテラのフィリップ・アンセルモを擁する7人組のファースト・アルバムは、過去の活動とは一線を画した静謐な楽曲が勢揃い。鍵盤やチェロを導入しつつ、アコギ主体の滋味豊かな音世界をここに構築。フィル自身も低音ヴォイスでセクシーに歌い上げ、パンテラとは真逆の大人びた声色で迫る。シャウトもディストーションも皆無だが、深淵なる歌メロが暗闇の中でギラリと輝く好盤と言いたい。
bounce (C)荒金良介
タワーレコード(vol.441(2020年8月25日発行号)掲載)