1981年3月にVanity Records 最後のLP 作品としてリリースされたtolerance の2nd アルバム。CDでの単独リリースは今回が初となる。
前作『anonym』で見られたピアノやギターなどを用いたフリーフォームな楽器演奏の側面は後退し、リズムマシンとシンセサイザーをメインとした電子音楽へと大きく歩を進めた作風。
NWW リストに選出されるなど同時代の作家に影響を及ぼすだけでなく、Posh Isolation など現代のエクスペリメンタルに続くサウンドヴィジョンも大いに見出せる傑作であり重要作だ。
1981年3月にVanity Records 最後のLP 作品(カタログ番号12 番)としてオリジナルがリリースされたtolerance の2nd アルバム。
1978 に設立され、パンク以降の価値観で活動する新たなバンドやバンド活動を経た音楽家のオルタナティブなアプローチなど、同時代の先鋭的な音楽動向をいくつかの側面から捉えてみせたVanity Records であるが、1981年からのリリースではINDUSTRIAL MYSTERY MUSIC=工業神秘主義音楽という方向性が強く打ち出される(これに合わせて近い時期にロック・マガジンの編集体制も新しくなっている)。
この方向性を宣言したのが1980 年12月リリースの2枚組LP『MUSIC』(VANITY0010-11) であり、単独の作品としてそのヴィジョンを示してみせたのが1981年3月リリースの本作『divin』といえるだろう。以降Vanity Records はこの方向性を伝える手段としてスピードを重視するためカセットでのリリースを選択し、結果的に本作がレーベル最後のLP 作品となった。
前作『anonym』で見られたピアノやギターなどを用いたフリーフォームな楽器演奏の側面は後退し、リズムマシンとシンセサイザーをメインとした電子音楽へと大きく歩を進めた作風。無機的なリズムの反復が骨格となった音楽性ではあるが、それが纏う音響は時に虚ろな、また時には鮮やかな色合いを持ち、前作での楽器演奏において感じられた和声感覚が受け継がれていることを感じさせる。
声の扱いもフィルターや変調を通すことでより抽象的なものとなっている。前作においてはまだ朧げな存在であった反復的な要素がくっきりと映し出される一方で、他の要素も(意図的に靄がかけられたような状態ではあるが)存在しており、故に表面的な音楽的装いを変えていながらtolerance の音楽としてのエレガンスや強度は失われていない。NWW リストに選出されるなど同時代の作家に影響を及ぼすだけでなく、Posh Isolation など現代のエクスペリメンタルに続くサウンドヴィジョンも大いに見出せる傑作であり重要作だ。
発売・販売元 提供資料(2020/05/29)