『待望4年ぶりのソロ・アルバムは時下清福の脳内風景ミュージック』
佐藤薫(EP-4)監修による「φonon (フォノン)」レーベルがCOVID-19禍中にお届けする新作は、リビングレジェンド山本精一による久々の完全ソロ・アルバム。自身のライヴで使用した音源やライヴ録音などを素材としながら、新たな演奏を加えてアレンジ。山本の脳細胞から多層的に分泌漏れしたたる、諧謔と知性そして狂気と浪漫の音風景──
《φonon (フォノン)》は、EP-4 の佐藤薫が80年代に立ち上げたインディー・レーベル《SKATING PEARS》のサブレーベルとして2018年2月に始動。主にエレクトリック/ノイズ/アンビエント系の作品を中心にリリースする尖鋭的なレーベル。
2020年、COVID-19 禍の最中にラインナップされる作品は、待望久しい山本精一によるソロ・アルバム『CAFE BRAIN/カフェ・ブレイン』だ。コマーシャル・リリースとしてのソロ名義作品は16 年の『Palm』以来4年ぶりとなるアルバム。ライヴ用に制作した素材やライヴ録音のフラグメントに新録を重ねながらトリートメントを施し、ミックスからマスタリングまで山本自身の手技で仕立てられた完全ソロ作品となっている。
アブストラクトな構成主義的トラックから、ダークに加速するアンビエント音像まで──瞬間に音が音を侵食し、あるいは拒絶し、またある刹那にそれを感受する──その狭間で軋むような、山本精一らしい多層的アスペクトを包み込む脳内音風景がひろがっている。
発売・販売元 提供資料(2020/05/29)
SUPER DOMMUNEでのフレンチフルコース付きディナーショーも話題になった山本精一の、実に4年ぶりの新作。ライヴ用の素材や録音の断片からなるアルバムとのことだが、寄せ集め感はまったくもって聞き取れない。すべての音が運命的かつ感覚的に、そこで鳴らされるべき音として鳴らされているように聞こえる。かの傑作『Crown Of Fuzzy Groove』(02年)からの連続性を感じるいっぽう、『CAFE BRAIN』では〈グルーヴ〉のくびきが解かれ、反復が肝となるリズム&ビートはアンビエンスへとどろどろに溶解し、霧散している。つまり、聞いていてめちゃくちゃ気持ちいいのだ。奇想の音楽家が繰り広げる世にも稀な音の桃源郷、ここにあり。
intoxicate (C)天野龍太郎
タワーレコード(vol.147(2020年8月20日発行号)掲載)