本作には、一部プリペアド・ピアノと事前に用意された音源を用いて披露された3曲が収録されている。楽曲「Klavierstuck II」(M1) では、オリジナルの重要な部分を踏まえつつ哀愁のある即興演奏を行っており、「Nocturne」(M2) はアンビエントなサウンドから始まり、ピアノの音色が音像に溶け込んでいきながら長編の瞑想的ピアノソロへと昇華して行く。3曲めの「Yonder」は、それらよりもドラマチックな作品で、迫り来る教会の鐘に圧倒されてしまう。それは「ディエス・イレ」的終末思想のごとく、ラディカルで気持ちが揺さぶられ身震いするような詩的なサウンドになっている。
イルミン・シュミットが「ノクターン」について語る『雲を見ていて、その形が人の顔や動物に見える人がいるように、特に夜寝てる時と起きている時の中間のような状態にいるとき、自分の周りにある雑音から音楽の姿が浮かんでくるような人も時折いるんだよ』
「Yonder」に関しては『周り一面廃墟に囲まれて暮らしていた戦争の時代、教会の塔だけが無傷で、おそらく毎日一時間ごとにその教会の鐘がこの廃墟の中で鳴り響いていたんではないかな。実はこの時の記憶が、私の人生において教会の鐘の音と感情的に強く結びついているんだ。ノートル・ダム寺院が燃えて灰になっていく姿をテレビの中継で見ていたときにその記憶が蘇ってきて、それでこの「Yonder」を作ろうと思い立ち、3週間後には曲が出来上がっていた』。
シュミットとヤングの共著で出版された『All Gates Open』(Faber & Faber)から、イルミン・シュミットが披露する『ある日の昼下がりの街で、セント・マーチン教会の美しい鐘の音が聞こえる。数分立ち、この鐘の音が私のいるこの街で鳴り響く全ての音を包み込み、それらを一つの音像の中に纏め上げていく。私の周りにあるハーモニーや色調、揺らぎや煌めき。私は立ち上がり、耳を澄ます。たまに、教会の鐘の音が聞こえる場所にいると、私は何故だか落ち着いて守られている気持ちになる。無神論者と言っても未だクリスチャンなのである』
発売・販売元 提供資料(2020/05/22)