Mordechai

テキサスのトリオ、クルアンビンのサード・アルバムが完成。ほぼ全ての曲でヴォーカルを導入し大胆な深化を遂げた2年振りとなるサード・アルバム『モルデカイ』、リリース。

ヒューストンをベースとするトリオ(ベースのLaura Lee Ochoa、ギターのMark Speer、ドラムのDonald "DJ" Johnson)、Khruangbinはニュー・アルバム『Mordechai』をNight Time Storiesの協力のもと、Dead Oceansより2020年6月26日にリリースする。これは高く評価された2018年『Con Todo El Mundo』に続くアルバムで、バンドは、今年の初めには、Leon BridgesとのコラボレーションEP『Texas Sun』もリリースした。アルバムからのリード・シングルは「Time(You and I)」で、同曲のビデオはFelix Heyes & Josh R.R. Kingが手掛けた。
Khruangbinは常に多言語だ。東アジアのサーフロック、ペルシャのファンク、ジャマイカのダブといった互いに遠く離れた音楽言語を繊細なハーモニーに織り込んでいる。しかし、3枚目のアルバム『Mordechai』では、ほぼ全ての曲でヴォーカルがフィーチャーされている。遊牧民的な放浪のスピリットを失うことなくKhruangbinの恍惚的なサウンドを直接的にエモーショナルな感覚へと向かわせるのは、リスクを伴うほどの大きな変化だが、この全ては彼らがツアーからテキサスへと戻った時に始まった。Khruangbinは『The Universe Smiles Upon You』『Con Todo El Mundo』という2枚の高い評価を獲得したアルバムと共に、南北アメリカ、ヨーロッパ、東南アジアと、2019年の夏まで、3年半近くもツアーを継続。その後、テキサス州バートンの農場にある自身のスタジオに戻り、サード・アルバムの制作をスタートさせたが、一旦、それをスローダウンさせた。その間、Ochoaは、Mordechaiという父親が率いる見知らぬ家族と一緒にハイキングへ行き、悟りを得て生まれ変わった。そして、彼女は沢山の言葉をノートに書き留めた。バンドがアルバムを構成する曲をまとめ始めた時、それぞれの曲の中にヴォーカルだけが満たすことができるスペースを見つけ出し、Ochoaのノートに目が向けられることとなった。以前、Khruangbinは「Friday Morning」や「Como Te Quiero」といった曲で歌詞を書いてはいたが、その時とは違い、今回は言うべきことがあるとOchoaは考えていた。そして、実際、その言うべき言葉がアルバムの中で使われた。結果、言葉が鳴り響くようになったことで、サウンドには大きな深みが与えられた。また、パキスタン、韓国、西アフリカの音楽をインドのチャンティング・ボックスとコンゴのシンコペーティッド・ギターに組み込んだようなサウンドは、それ以上に彼らを育ん折衷都市、テキサスをセレブレートする内容となった。この文化的な交流地ではカントリー、ザディコ、トラップ・ラップ、アヴァンギャルド・オペラ等が毎晩聴くことができるのである。テキサスから離れた数年間、Khruangbinのメンバーは水の中で泳いでいるような感覚を持ったことがあった。しかし『Mordechai』によって、彼らは穏やかに水面へと戻り、息を吸い、周り見回し、再び自分自身を見つけることが出来るようになった。これは大きな旅の中で撮られたスナップショットのような作品だ。無常の為、その一瞬が美しい。しかし、その記憶は何度も何度も蘇り、その都度、以前よりも我々に鮮明に語り掛けるのだ。

After Khruangbin released their second album, Con Todo el Mundo, in early 2018, the jet-setting Texan trios music suddenly seemed to pop up everywhere, from play lists of many stripes to hip boutiques and eateries. Their uncategorizable but easily enjoyable blend of psych, funk, dub, and myriad other styles managed to find the right audience, and they sold out concerts left and right, while vinyl collectors fiended over limited pressings of their records. Several months before their third full-length appeared in 2020, they collaborated with retro-soul troubadour Leon Bridges on the four-song EP Texas Sun, their first release to feature clear, upfront singing. Mordechai contains vocals on nearly every song, and the group have much more to say this time around. Time (You and I), maybe their best song to date, reflects on a desire to build a future with someone, if only there was more time and the feeling was mutual. The sprawling disco beat and playful cadences make the song an easy party jam, but the lyrics mixture of fantasy and invitation resonate harder than anything else theyve written. Almost as affecting is If There Is No Question, an unassuming soul groove which carries the comforting reassurance that Youre wild, but youre not crazy. So We Dont Forget is light, steady funk with Afro-pop guitar lines, glistening organ, and softly cooing vocals, and its mood is equal parts blissful vibing and bashful introspection. A chilled-out reggae variation titled One to Remember is also present, echoing the bands 2019 dub excursion Hasta el Cielo. Much more outgoing is Pelota, a spicy, percussive tune filled with handclaps and exuberant Spanish-sung vocals. The band also have a bit of fun alluding to French New Wave films with the seductive dialogue of Connaissais de Face. Khruangbins music can still work as an ebullient, sun-baked soundtrack to daily activities, social gatherings, or cross-country road trips, but their songs have gotten more expressive and soul-searching, and Mordechai rewards closer listening more than any of their previous recordings. ~ Paul Simpson

2018年に2作目『Con Todo El Mundo』をリリースしてからの彼らの勢いは凄まじかった。世界各地でライヴを行い、日本では単独公演を即完させて〈フジロック〉にも出演、〈コーチェラ〉でも圧巻のパフォーマンスを披露した。作品を重ねるごとにさまざまな国の土着的な音楽やカルチャーを吸収して変化してきたが、このサード・アルバムではライヴで訪れた韓国や西アフリカ、パキスタンの要素を加え、ほぼ全曲にメンバーのヴォーカルをフィーチャーしている。大きく変化はしているが、スロウテンポなファンクの心地良さと絶妙にゆるゆるなグルーヴは健在だ。先行シングル"So We Won't Forget"のMVが日本で撮影されているのも注目。さあ、クルアンビンという飛行機でぜひ世界各地をめぐる音楽の旅へ。
bounce (C)長谷川義和