ベートーヴェン、スクリャービン、マルティヌー: ピアノ・ソナタ集

「幻のピアニスト」、あのブルヴァの感動、ふたたび。

2014年と2015年にRCA Red Sealからソロ・アルバムを発売し、その滋味溢れる演奏で驚きと感動を与えてくれたジョゼフ・ブルヴァ。5年ぶりのニュー・アルバムの登場です。

ブルヴァは1943年ブルノ生まれ。生地の音楽学校で学び、そこで最初に師事したヴァーツラフ・ランカは彼の才能を見抜き、これを大切に育て上げました。ブルヴァは13歳でデビューを飾り、その才能はチェコ内外で認められました。しかし、1971年に事故に逢い、1年間の活動休止を余儀なくされたことで、自らの芸術への思いを見直し、その翌年にルクセンブルクに亡命します。数多くの録音を行い、世界中で認められ始めた頃、彼を再度の悲劇が襲います。1996年3月、凍った道で滑って転んだ彼は左手を負傷、一度は引退を決意しますが、音楽への思いは絶ち難く、手術とリハビリを繰り返し2009年に復帰しています。

彼の最新録音となる2019年に録音されたこのアルバムでは、まさに"音楽への愛"溢れた3人の作曲家のソナタを聴くことができます。2020年に生誕250年を迎えるベートーヴェンの2曲のソナタは、どちらも2楽章からなる比較的規模の小さい作品ですが、ベートーヴェンの穏やかな面が垣間見える旋律的な曲で、とりわけ第27番はシューベルトに影響を与えたといわれるほどに「歌」に溢れたソナタ。ブルヴァの演奏はまさに旋律を慈しむかのような味わい深いものです。続くスクリャービンでは、淡々と曲を進めながらも、第3楽章ではスクリャービンの求める官能性をじっくり描きだしています。そして最後に置かれたのはマルティヌーのソナタ。1954年、彼の晩年に書かれたこの作品は、親友ルドルフ・ゼルキンに捧げられた曲で、祖国チェコを離れ、結局帰郷することができなかったマルティヌーの望郷の念が込められているという力作ですが、ブルヴァは同郷の作曲家の意を汲み取り、刻々と移り変わる楽想を丹念に紡ぎあげていきます。その朴訥とした歌い口は、現代のピアニストたちとは全く違う魅力を放つものです
ソニー・ミュージック

The trio of works on this release by pianist Josef Bulva might seem random, but they come off as a unified group. This is partly because they all fit Bulvas rather dry style. His pair of two-movement Beethoven sonatas is especially fresh, with a genuinely unusual but not out-of-court reading of the Piano Sonata No. 24 in F sharp major, Op. 78: sample the first movement to hear Bulvas slight ritardandi that seem humorous yet suggest some kind of deeper reflection. The Scriabin Piano Sonata No. 3 in F sharp minor, Op. 23, has its gaze into the future emphasized rather than the composers roots in Chopin. There are more spiritual readings of the work, but Bulvas reading is precise and rigorous. The rarer Piano Sonata No. 1 of Martinu, a big work that Rudolf Serkin used to pair with Beethoven sonatas, gets an unemotional yet beautifully crafted performance that may bring that master to mind. A fresh, offbeat look at a varied group of works.