不動のメンバーで18年あまり活動するザイトリン・トリオ NYの名クラブ、Mezzrowでのライヴ!スタンダード7曲+オリジナル2曲、充実の9曲!!王道的表現とエヴァンス直系の詩的なオリジナル ラストはザイトリンの多彩な表現が集約されたショーター・ナンバー
1938年生まれ、80歳を超えた大御所ピアニスト、デニー・ザイトリンのレギュラー・ピアノ・トリオによる最新ライヴ録音。
2001年、サンフランシスコ・ジャズ・フェスティヴァルでの演奏を機に結成されたトリオで、不動のメンバーによる活動はこの録音時、18年余り。バスター・ウィリアムス、マット・ウィルソンを擁するトリオは、ザイトリン自身が精神科の医師である事情を含め、なかなかスケジュールも合わず、演奏を共にすることは叶わないものの、年月を重ねて着実に成長し、素晴らしい演奏を聴かせてくれます。
本作の舞台は、NYグリニッジ・ヴィレッジにあるクラブ"Mezzrow(メズロー)"。Smalls, Fat CatといったNYの重要拠点を創り上げてきたスパイク・ウィルナーが手がけているもので、ザイトリンも大のお気に入り。大きなフェスティヴァルで演奏することも多いザイトリンながら、素晴らしい音響スペースと、完璧なスタインウェイのピアノ、リスナーが創り出すインティメートな空間はパフォーマーにとって特別だと語ります。そして、そんな環境で、この日も美しい演奏が生まれました。
全体的に、シリアスになりすぎることなく、良い意味でのリラックス感も感じさせる9曲ながら、ザイトリンの長い経歴がにじむ年輪と多彩さが入り混じる演奏は、さすが活動歴の長いトリオならでは。ガーシュインの言わずと知れた名スタンダード・ナンバー"The Man I Love"では、原曲のリハーモナイズもユニークで典雅な和声を聴かせたかと思えば、ソロではアブストラクトなアプローチを見せる場面あり。演奏を始めた時から大好きだったと語るセロニアス・モンクの"I MeanYou"では、モンク・ナンバーならではのねじれた旋律とスウィングするリズムを基本としながら、低音部から高音部まで音程を広くとった演奏を見せ、一方、3曲取り上げるストレイホーンのナンバーでは、バラード表現の端正な美しさと、ブルーズを表現。一方、オリジナル2曲は、詩的な表現で、エヴァンス派とも呼ばれることのあるザイトリンの美的センスも遺憾無く発揮しています。そして、ラストはウェイン・ショーターの楽曲の秀逸な演奏。ザイトリンは一作全てショーターを取り上げたソロ・アルバムも制作。その作品でも、ショーターの楽曲が持つ雰囲気を、ミステリアスさをたたえた和声と、斬新なメロディで再現して見せましたが、そこを土台にして、トリオでインプロヴィゼーションもフィーチャーしてスリリングに展開していくここでの演奏は、ザイトリンの表現すべてが詰まっていると言っても過言なし。アコースティックな演奏の深みとともにエレクトロな作品、アヴァンギャルドな演奏も試みてきた多彩な経験が、ここに集約されています。
このトリオで作品も5作目。ザイトリン自身、ライナーノーツ/各曲の解説も執筆し、"リスナーに楽しんでもらえたら嬉しい"と語る充実の一作です。
発売・販売元 提供資料(2020/04/06)