目を閉じたら、こころの風景が広がっていた。囁かれるように紡がれていく「音の葉」は心の底を掻き乱し、やがて氾濫する音の波が乱れた心を共鳴へと導く。静謐感と騒擾感。この2つの相反する感覚が、音の一粒一粒にまでこだわり抜かれた50分間の物語の中で繰り返し繰り返し折り重ねられていく。そのページをめくるたびに、奏でられた世界は耳から脳へ、脳から身体へ、そして骨にまで染み込んでいくだろう。
この作品は、いわゆるインスト・ポストロックと呼ばれるジャンルで積み重ねられてきた音像構築の手法をベースに、きわめて内省的で哲学的な世界を表現するために、従来のロックミュージックにみられたキャッチーなメロディラインやリズムパターンを敢えて排した1つの実験的作品である。ギター・ベース・ドラムスというシンプルな楽器編成を最小編成のオーケストラのように見立て、「空気を震わせ音を創り出す」という音楽の原点に正面から向き合い、それによって何を呼び起こすことができるのかという音楽の本質を問おうとした意欲的で実験的な作品であるといえよう。本作のTrack 5 は15分に及ぶ長大な楽曲であるが、このバンドが試みた音楽表現の現時点での集大成であるといえ、あえてリードトラックとして位置づけたいと考えている。マスタリング時のマックスのレベル設定も、そうした趣旨に見合うよう周到に設定され、聴者の好みに合わせた音量でじっくり聴き込めるかたちに仕上げた。God speed you! Black Emperor、Slint、初期MOGWAIなどが試みた音楽的実験の継続という性格も持った稀少な作品であり、形骸化しつつあるポストロックの枠からはみ出て一石を投じうるはずである。
発売・販売元 提供資料(2020/03/30)