AIで復元されたArthur RussellがBrainfeederと即サインし録った音を、冷凍保存から目覚めたNoah "40" Shebibが全面プロデュースした2390年代を代表するあの名盤が奇跡のリイシュー…そんな、圧倒的傑作が誕生した。
Lo-Fi ヒップホップのゆらぎとエレクトロニカの煌めき。白い光の中にするりと形を現す美しいシルエットはジャズピアノの洗練とゲーム音楽の完全制御された自由さ -その間を行き来し、プログレッシヴのむこうに佇む、不思議な風通しの古びた小家で密やかに鳴るこの音楽は、明らかに未来からこちらに向かって来た様子だ。
Miguel Atwood-Ferguson、Benjamin Herman、Stuart McCallum、Tawiahらとの共演でも世間から認知され、近年ではThe Cinematic Orchestraのメンバーとしても活躍し、Solange、J Dilla、Zap & RogersからPete RockそしてDil WIthersやMF Doom、ゼルダの伝説まで飛び出すDJM trio名義でのピアノトリオカヴァー集も世界中のビートジャンキーたちの間で人気を博す彼のソロ名義では4作目となる本作は、自身初となるヴォーカルを大々的にフィーチャーした意欲作。独特でひねくれていて、くたびれている、ゆるいファンクネスを帯びたその歌声は、歌と演奏の間を縫う様な魅惑的な調べを司ってみせる。小気味よいラップから、スピリチュアルなムードを醸すスポークンワード調、そして牧歌的に宇宙空間へと漏れ出す脱力ソウル歌唱まで、変幻自在に楽しみ、楽しませてくれる。
ここ数年で更なる熱気と盛り上がりを見せるUKジャズシーンの蜜月を感じさせる重いグルーヴのダークなうねりと、現地に根付くクラブカルチャーの影響を大いに含んだファンキーで奇妙なサウンドが、この2020年に、ジャズをジャズたらしめる新たな刺激を提供する。今作のヴァラエティに富んだ印象的なビートの数々は、MPCか生音かの判断がつかない独特なプレイで鼓膜をプッシュする注目の若手ドラマー Peter Adam Hillによるもの。Alfa Mistの最新作でも叩いている彼の重心の低いリズムは、US/UKの地下ビートシーンに造詣の深いDominicの音楽にソウルフルな魅力を継ぎ足している。
発売・販売元 提供資料(2020/03/27)
シネマティック・オーケストラ作品への参加や彼らのツアーを共にするなど、実力は折り紙つきの若手鍵盤奏者による、自主制作盤を含めれば4枚目となるアルバム。センティメンタルな音色を奏でるピアノ・ワーク、たっぷりと間を取った浮遊感のあるシンセ、しっかりとしたリズム・セクション、そして随所に差し込まれるポエトリー・リーディング。流石はジェイソン・スウィンスコーも認めた才能だ。
bounce (C)藤堂てるいえ
タワーレコード(vol.438(2020年4月25日発行号)掲載)