ベイエリア・スラッシュ・シーンを代表するバンド、テスタメント。デビュー・アルバム『Legacy』のリリースが87年であったため、ポスト『Master of Puppets』期のシーンを担ったというイメージが強いが、その結成は83年。つまり、スラッシュ創成期から活動してきたファースト・ジェネレーションに属するバンドなのである。結成当時の名はレガシー。ヴォーカリストはみなさんご存じ、スティーヴ・"ゼトロ"・スーザであった。だが86年、ゼトロがエクソダスに引き抜かれるという事件が起こる。後任ヴォーカリストとしてチャック・ビリーを迎え、デビュー・アルバムをレコーディングした彼らは、再び問題に直面。「レガシー」という名を商標登録していたジャズ・バンドがいたため、改名を余儀なくされたのだ。この時、「テスタメント」という名前を提案したのは、S.O.D.のヴォーカリストとして知られるビリー・ミラノである。
しかし当時、彼らにはそんな問題を吹き飛ばす追い風が吹いていた。『Master of Puppets』がビルボード上位にランクインしたことで、メタリカのお膝元、サンフランシスコのスラッシュ・メタル・バンドには大きな注目が集まっていたのだ。当然テスタメントも例外ではない。そのデビュー・アルバム、『Legacy』は、いきなりメジャーからのリリース。その後も『The New Order』(88年)、『Practice What You Preach』(89年)、『Souls of Black』(90年)と快進撃を続けていった。ヘヴィメタル暗黒時代の90年代も、テスタメントは解散することなく前進を選択。01年にはチャック・ビリーが珍しい種類の癌にかかるという不運に見舞われるが、彼は不屈の闘志でこれを克服。ヨーロッパ最大手のニュークリア・ブラスト・レコーズと契約後、『The Formation of Damnation』(08年)、『Dark Roots of Earth』(12年)、『Brotherhood of the Snake』(16年)とハイクオリティな作品を発表し、現在もベイエリア・スラッシュ・シーンの顔役の座を守り続けている。
そして前作から再び4年の2020年、待望のニュー・アルバムが発売となる。『タイタンズ・オブ・クリエイション』と題された本作は、ギタリストのエリック・ピーターソン曰く、「オールドスクールなスラッシュ」。これに狂喜しないテスタメント・ファンなどいないだろう。エリックに言わせると「マーシフル・フェイトみたい」なハーモニーも、パワフルなアルバムに花を添えている。ヘヴィ、ファスト、時にキャッチ―。良い意味で安心して聴ける、テスタメント・ファン、スラッシュ・ファンのためのテスタメントによるアルバムだ。アートワークはエリラン・カントール、ミックスはアンディ・スニープと、バンドをバックアップするのもいつもの布陣。
発売・販売元 提供資料(2020/02/18)
スラッシュ・メタル・シーンの重鎮テスタメントが通算12枚目のニュー・アルバムをリリース!エリック・ピーターソンが"オールドスクール・スラッシュ"だと断言するテスタメント待望のニュー・アルバムを、避けて通れるスラッシュ・ファンなどいるはずもない。速くてヘヴィ、時にキャッチ―。まさにテスタメント・ファンのためのテスタメントのアルバム。 (C)RS
JMD(2020/02/18)
前作も良作だったが、この12作目もそれに引けを取らない会心作。今回はエリック・ピーターソンいわくオールドスクール・スラッシュを意識したらしく、みずからの原風景に立ち返った一枚と言える。わかりやすいリフ、ミッドテンポの重心の低い曲調、そして、チャック・ビリーのうねりを上げる極太ヴォイスも迫力満点だ。ヴェテランの強味と旨味を効かせたフック抜群の曲調にテンションは上がるばかり。最高!
bounce (C)荒金良介
タワーレコード(vol.438(2020年4月25日発行号)掲載)