ラウル・ミドン 通算11作目となる新作
セルフ・プロデュース/ 全曲オリジナル・コンポジション=ラウル節全開の10曲
等身大の自分を語る楽曲とギル・スコット・ヘロンを意識したというメッセージ性
Jazz, Swing, Mellow Tune, R&B, Tropical,そしてポエトリー・リーディング
盲目のシンガー/ソングライター、ラウル・ミドンが2005年にメジャーのマンハッタン・レコードからソロ・アルバム『ステイト・オブ・マインド』でシーンに登場してからはや15年。以後コンスタントにアルバムを発表。2020年3月、通算11枚目の作品『ザ・ミラー』をリリースする。1966年(丙午=ひのえうま)3月14日ニュー・メキシコ州生まれのラウルは生まれながらにして失明。大変な勉強家で知性の持ち主。独学で音楽、ギターなどを学び、音楽で独り立ちするようになった。
大学時代は図書館に通い詰めて、知らないことを学んだ。その頃ものごとを調べることが大変だったが、インターネットが誕生し、今では検索すればなんでも答えが出るようになったことを歌った「オール・ジ・アンサーズ」(アルバム2007年発売『ア・ワールド・ウィズイン・ア・ワールド』収録)などは彼がいかに勉強好きで知識欲旺盛な人物かを表している。ギターの腕前を上げ、口でトランペットの音色を出し、自作曲を奏でるラウル・ミドンは、盲目ながら世界をじっくり観察し、豊富な語彙(ヴォキャブラリー)で歌詞を紡ぐ。
新作『ザ・ミラー』では、豪華なゲストも迎えている。ジャズのヴィブラホン奏者ジョー・ロック、ドラムスにアンドレス・フォレロ、ベースにリチャード・ハモンド、バック・コーラスにジャニス・シーゲル(マンハッタン・トランスファー)、トランペットのゲイリー・アレスブルックなどだ。
そしてここでは、彼はラップ以前のブラック・ミュージック界におけるナレーティヴ(しゃべり、ナレーション)を取り入れている。ラウルによると、たとえばラップ以前のギル・スコット・ヘロンのような詩人のレコードを意識したという。
【メンバー】
Raul Midon (g-all tracks, vo-all tracks, charango-3, programming-3, 7, banjo-8)
Gary Alesbrook (tp-4)
Vincent Cherico (ds-4, 6, 9)
John di Martino (p-4, 6)
Andres Forero (ds, percussion-1, 3, 5, 7)
Richard Hammond (elb-1, 3, 5, 7)
Lauren Kinhan (background vo- 1)
Boris Kozlov (upright b -4, 6, 9)
Joe Locke (vib-6)
Romeir Mendez (upright b-10)
Janis Siegel (background vo-1)
Billy Williams (ds-10)
発売・販売元 提供資料(2020/02/12)
キャリア15年を迎えた名シンガー・ソングライターの通算11作目は、肩の力を抜いてひたすらグッド・ソングを紡いだような、ここ数年でも屈指の快作だ。ワンダーなメロディーを軽やかな7分の4拍子で届ける"I Love Afternoon"、ラテンR&B風な"You're The One"など彼らしい作風に加え、軽妙なモータウン作法やナット・キング・コールを思わせる小粋なジャズ・ヴォーカルまで、洒脱なヴォーカリストとしての魅力も前面に出た充実作。
bounce (C)池谷瑛子
タワーレコード(vol.438(2020年4月25日発行号)掲載)